「クルマを運転中の携帯電話の手持ち使用」が違反となる11月1日の改正道路交通法施行を前に、イヤホンマイクは駆け込み需要が続いているが、それを販売する側にも、購入する側にも“温度差”が生じている。
多くの商品が並ぶ量販店と比べた場合、各携帯電話キャリアが運営するショップでの盛り上がりは今ひとつといった印象も受ける。
記者は都内を中心に数店舗を訪問したが、従来から純正イヤホンマイクの在庫を持っていないショップもあるほど。純正品の在庫が無いようでは、機種変更のタイミングなどでイヤホンマイク購入を望んでも、それはかなわない。
普段から在庫を確保していたという店でも、そんなに多くの在庫量はなく、記者が訪問したときには品切れだった。店員からは「今は品切れです。売れることはわかっているので見込みで発注を掛けていますが、全体的に品薄が続いていて、いつお渡しできるかという確約ができません」と説明がなされ、予約を勧める状態。
純正品の方が安心という人は多いだろうが、このような状況ではその場で商品を手にすることは難しい。
販売する側に温度差が生じている一方、購入する側にも温度差が生じているようだ。
多くの商品が並べられている家電量販店の店員は「イヤホンマイクについては、たしかにここ数カ月で今が一番の盛り上がりとなっています」と前置きしながら、売り場に立つ実感として次のように語っている。
「クルマを仕事に使っている人、例えば営業マンとか職業ドライバーであるとか、30歳代よりも上の世代の男性からは“どれが売れ筋なのか”と積極的に聞かれ、実際に用品をお買い上げいただいております。ところが、それよりも下の世代には商品自体の人気がない、という印象なのです」
記者自身も店頭でイヤホンマイクを買いに訪れる客をウォッチしていたのだが、たしかに若い世代は少ないようだ。だが、これには別の理由があるようにも思える。
今の日本で「携帯電話を一番使い慣れている層」といえば、言うまでもなく20歳代前半の男女だが、彼らにとっての携帯電話は「通話をする」というよりは「メールをする」とアイテム。
イヤホンマイクをはじめとしたハンズフリーアイテムは、当然ながら「通話時に使う」ということに主眼が置かれている。このため、普段の使用形態が「メール」という若者世代へのアピールが今ひとつになってしまっているのかもしれない。
もちろん、今回の改正道交法では「走行中にメールを打つこと」も禁止されているし、違反としてみなされる。手に持ってはいけないのだから、ある意味では当然なのだが、この部分の周知徹底がなされておらず、従って「自分たちには関係ない」と思ってしまっている若者は意外に多いのではなかろうか。