【トヨタ ハリアー/クルーガーハイブリッド×創った人】 その1 ハイパワーモデルの新たな価値観…岡根幸宏チーフエンジニア

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【トヨタ ハリアー/クルーガーハイブリッド×創った人】 その1 ハイパワーモデルの新たな価値観…岡根幸宏チーフエンジニア
【トヨタ ハリアー/クルーガーハイブリッド×創った人】 その1 ハイパワーモデルの新たな価値観…岡根幸宏チーフエンジニア 全 8 枚 拡大写真

「かつてない加速フィールを持ったクルマを作りたかった」——トヨタ自動車が3月22日に追加設定した『ハリアー/クルーガー・ハイブリッド』。開発のチーフエンジニアを務めた岡根幸宏さんは、自らの思いをこう切り出した。

岡根さんは81年にトヨタ入社後、主にエンジン関連の開発を手がけた後、95年に第1開発センターに移って初代『ハリアー/クルーガーV』の製品企画を担当。2001年からは2代目となる現行ハリアー/クルーガー(03年2月発売)の開発責任者を務めてきた。ハリアー/クルーガーとの付き合いは初代から数えると10年にもなる。今回追加されたハイブリッドモデルは、岡根さんにとってはハリアー/クルーガーの到達点のひとつといえる。

「通常、ハイパワー車が全開加速するときは、変速するたびにエンジンの回転数が下がり、トルクの段つきが出ます。ハイブリッドカーはそういう段つきのない、シームレスな加速を持っています。モーターやジェネレーターの性能向上、電池の高密度化などでシステム出力200kWを実現したハリアー/クルーガー・ハイブリッドは、ハイパワーモデルの新しい価値観を提案し得るものに仕上がったと自負しています」

現行ハリアー/クルーガーは、開発当初からハイブリッド化を想定して設計を行なったという。そのため、ハイブリッドシステムの実装自体には大きな問題は起こらなかった。

「サスペンション、エンジンルームなどの基本的な部分は、ガソリンエンジン仕様と基本的に変わりません。最初からハイブリッドシステムが入るように設計してましたから、大変更は必要なかったんです」

むしろ、苦労したのはハイブリッドシステム…THSIIの高性能化のほうだった。モーターのパワーを上げるためには、コイルの巻き線を増やすのがいちばん手っ取り早いが、それでは重量もスペースもかさみすぎてしまう。そこでトヨタは最高回転数を『プリウス』の2倍以上の1万2400rpmに引き上げ、それを減速ギアで約2.5分の1の回転数に落とすことで最高出力と低速トルクを両立させた。システム電圧も現行プリウスよりさらに引き上げられ、定格で288V、さらに昇圧コンバーターによってピーク時には650Vに達する。高出力化、高耐圧化は一筋縄ではいかなかったという。

「THSII開発チームのほうでは、本当にいろいろと苦労をしていました。出力100kW超級で1万rpmオーバーのモーターはあまり前例がなく、いざ作り始めてみると、問題がいくつも出ました。高回転領域では電流センサーや回転センサーの誤差が原因でモーターの出力が勝手に変動するという現象が出たため、制御の冗長性を持たせたり、高回転化に合わせてコイルの絶縁性能を上げたりと、いくつもの壁に当たってはそれを克服し、という作業の繰り返しでした」

ほか、クルーガー・ハイブリッドをノーマルと同じ3列シートにするため、ハイブリッド用バッテリーを床下の限られたスペースに置けるよう3分割したうえで薄型化したり、冷却のためにエンジンルームへの導風性をアップさせたりといった工夫もあった。

これらの努力の結果、「これまでのハイブリッドはもちろんのこと、V8エンジンを搭載した世界の重量級ハイパワーSUVと比較してもまったく次元の異なる加速感を手に入れることができたと思います」。(つづく)

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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