飲酒運転は警官の思い込み…無罪に

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昨年5月、佐賀県佐賀市内で飲酒運転を行ったとして道路交通法違反の罪に問われていた54歳の男性に対し、佐賀地裁は4日、警察官の思い込み捜査を指摘、「犯罪の証明がない」として無罪の判決を言い渡した。

問題の事件は2004年5月4日発生している。

佐賀市愛敬町付近をパトロールしていた佐賀県警・佐賀署員が一時停止違反のクルマを発見。追跡中に見失ったが、近くにあるコンビニエンスストアの駐車場に止まっているのを発見。運転していた男性に職務質問を行った。

男性は「運転代行業者の到着をここで待っている」と主張したが、男性の呼気から酒気帯び相当量のアルコール分を検出したため、道交法違反容疑(酒気帯び運転)容疑で摘発した。

だが、男性は「自分はずっとここにいて、飲酒運転の事実は無い」と逃走の容疑については全面的に否認。違反キップなどへの署名を拒否した。

署員は警察署への任意同行を求め、その後に約2時間に渡る事情聴取を実施。身柄拘束も示唆されたことから、男性は最終的に調書への署名と捺印。同日未明になってようやく釈放された。

その後、男性はこの対応に不服の姿勢を見せるとともに、「自分は公道を走っておらず、指摘される一時停止違反にも覚えがない」と主張して罰金の支払いを拒否。

正式裁判に移行し、公判では警官が目撃した逃走車と、男性が乗っていたクルマが同一のものであったかどうかが争点となっていた。

4日の判決公判で、佐賀地裁の坂主勉裁判官は男性を摘発した警官2人の証言に着目。逃走したクルマの色や特徴などが変移し、男性のクルマにより近くなっていったことを重視。

「一時違反を行って逃走したクルマと男性のクルマの色や形状が似ている程度に過ぎず、あいまいなのにも関わらず同一視し、後になるほどその傾向が顕著になった」と指摘。違反車両として断定した根拠に欠けることを認めた。

さらには「たまたま発見したクルマの運転者からアルコール分が検出されたことで、当初は似ている程度に過ぎなかったクルマを容疑車両と決めつけ、被告が違反行為を行ったと思い込んで取り調べを行ったものと推察される」と指摘。

警察による思い込み捜査が行われたことを認め、「信用性が乏しく犯罪の証明がない」として、被告の男性に無罪を言い渡した。

検察側は「上級庁と検討して対応を決めたい」とコメントしている。

《石田真一》

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