『フーガ』450GTをワインディングで振り回した。ワタシはアメリカで、インフィニティ『M45』に対して多くの取材を行なってきた経緯もあって、“このV8モデルのことはわかっているつもり”だ。
ひと通りのチェックのあと、フーガ開発責任者・日産自動車商品開発本部の大澤辰夫さんが「どうでした?」と聞いてきた。ワタシは素直に感想をいった。「350GTは、車重と重量バランスに対して19インチタイヤが少し硬い気がする。それが450GTと19インチはしっくりくる。18インチでもじゅうぶん」
これに対して大澤さんは「じつは450GTは350GTよりショックアブソーバーの減衰力を多少ですが弱めています」と詳細を教えてくれた。
450GTで大澤さんがもっとも強調したことは「速さ」だ。市街地を上質にゆったりと走れることは必要最低条件であり、さらに速く、ガンガンに乗っても楽しめるクルマを目指して作りこんできた。だからワタシはフーガ450GTでワインディングを攻め込めたのだ。V8搭載によるドッシリ感はあるが、フロントヘビーでのアンダーステア感は少ない。リアアクティブステア介入に「ハイテクに頼った走り」を意識することはなく、「ハイテクで楽しい走りがスポイルされる」ことはまったくない。
走りの決め手となるリアの動きだけ見れば、電動スタビ搭載のレクサス『GS』430やBMW『5/7シリーズ』とフーガ450GTの味わいは大きく違う。フーガは、クルマ全体の動きがドライバーに対してじつにストレートなのだ。エクステリアもインテリアも(世界各国の人にとって)ストレートでわかりやすい高級さ、上質さが伝わってくるのだ。
フーガは日産の高級車の新しい流れを作った。で、これから先はどうなるのか?「方向性はかなり定まっています。(FR車を基本として)ドライビングプレジャー、日本的な作り込みのよさ、お客さんに安心して乗って頂くことを組み合わせていきます」。その進化の過程でインフィニティの日本導入はあるのか?「そう思います。世界のラグジュアリカーとじゅうぶんに戦っていけるクルマはできています。これからは、セールスネットワーク、ブランドの色づけをどうするするのか。そこにもう少し時間がかかる。レクサスの動きも見させて頂きながらじっくり考えます」。大澤さんはいつものように、人懐っこいい表情で大きく笑っていた。