実際に『ハイゼットカーゴ ハイブリッド』走らせてみると、きわめて“普通”のクルマである。システムをONにすると、エンジンはまわらず、主電源が入った状態。エアコンを除くすべてのアクセサリーはこの状態で使用可能だ。アクセルを踏むとモーターアシストとともにエンジンがかかり、発進する。発進加速は非常にスムーズで、スナッチなどの違和感はまったくといっていいほどない。
が、感覚的にHVらしいのはここまで。走行中、モーターアシストは穏やかで、動力性能が向上したという印象はほとんど受けない。じつはそのような味付けも“商用車チューン”の一環。低回転時にスロットルペダルを踏み込んでも、エンジン本体の電子制御スロットルは大きくは開かず、まずモーターのアシスト量が増え、さらにトルクが要求されるときにエンジン側のスロットルが開くというイメージだ。
減速、ブレーキ、降坂時には積極的にエネルギー回生を行なう。実走行でも、空走時やブレーキング時にはかなりこまめに回生していることが体感された。ちなみにアシスト、回生の状況は、それぞれ4目盛りずつのインジケーターで、バッテリーの残量は3目盛りのバーで視覚化されている。ビジネスユースにおいてはエネルギーモニターの動きを気にしながら走るドライバーはほとんどいないであろうことを考えると、これがHV化における、ささやかなデコレーションともいえよう。
『ハイゼットカーゴ ハイブリッド』の販売目標は今年度が100台。また、今年度末には型式を取得する予定で、来年以降は年販300台を見込んでいるという。販売台数がごく少数にとどまる最大の理由は価格だ。車両価格は税込み221万5500円と、ベースに比べて2倍近い。「販売台数を増やして、この価格を下げていくことが当面の課題です」(製品企画部の鈴鹿信之さん)
ダイハツは今後、HVを乗用車にも展開していきたいと考えている。試作段階では2モーター方式の高度なシステムを含め、いろいろな種類のハイブリッドユニットを作っているが、軽自動車にとって価格が高いことは大きなマイナスであるだけに、価格の引き下げは重要だ。
「少なくとも現状の100万円差を50万円に圧縮する必要があると思っています。ウチのような小さいメーカーにとって簡単なことではありませんが、ぜひ前向きに取り組みたい」と語ってくれた。