モバイル長崎スマートカード誕生に見る、公共交通の課題と進化

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モバイル長崎スマートカード誕生に見る、公共交通の課題と進化
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●おサイフケータイ採用の動機は「利便性向上」と「コスト削減」

おサイフケータイ対応への取り組みは、昨年8月からスタートした。その背景には、FeliCaカード採用で表出した課題の解消があったという。

「FeliCaカードの大きな課題として、残高や利用履歴が見られないというものがありました。(長崎スマートカード導入初期から)実際にお客様から『残額はいくらなのか』、『運賃がいくら引かれたのか詳しく知りたい』といった問い合わせの声が多く、この対策が必要でした」(中塚氏)

磁気式のプリペイドカードならば、パンチ穴で大まかな残額が確認できる。また、バス乗車時と降車時にはリーダー/ライターでの残額表示もされるのだが、乗る前や降車後に残高と利用履歴を確認したいというニーズは大きかったという。

「当初はFeliCaカードに残高をリライタブルで書き込む方式も検討したのですが、プリント方式だと専用の機械で約1−2分がかかる。これではバス車内での利用は現実的ではない。おサイフケータイならば、画面で残高や利用履歴を確認できますから、こういったニーズに対応できる」(高崎氏)

実際、インデックスが開発したモバイル長崎スマートカードのアプリは、残高や利用履歴の確認画面が見やすいようにデザインに気が配られている。これはバスに限らないが、公共交通では定期券区間からの乗り越しや、複数路線の乗り継ぎが多いので、利用履歴確認のニーズは高いようだ。

おサイフケータイに対するもうひとつの期待が、FeliCaカードの発行原価圧縮によるコスト削減だ。

「FeliCaカードは正直なところ、原価が高い。しかも長崎スマートカードでは一部のバス事業者の反対があり、デポジット制を取らなかったため、最悪『使い捨て』られるリスクがあります」(中塚氏)

磁気式プリペイドカードではなく、FeliCaカードを採用した理由のひとつに「繰り返し使える」という技術的優位性があるが、デポジット制を取らなかった運用面の理由により、「使い捨てられる」リスクが高まるという皮肉も生じた。

「現在、販売後に再チャージされないスマートカードの比率は5%以下ですが、発行枚数が約32万枚ですからね。コスト負担としては大きい」(中塚氏)

FeliCaカードの原価は発注枚数によって異なるが、長崎県バス協会の場合は1枚500円を超えるという。複数回の繰り返し利用でなければ、事業者側は完全な赤字になる。

「使い捨てられるリスクを避けるため、2回目のチャージ以降に利用分を10%積み増しするなど工夫をしています。しかし、根本の部分でカードの発行原価負担は大きい」(高崎氏)

一方、モバイル長崎スマートカードの場合、アプリのダウンロード後に窓口で発券手続き(利用者登録)を行うと、フェリカネットワークスに支払うライセンス料がかかる。しかし、カードの発行原価と比較すれば、FeliCaアプリのライセンス料の方が安いという。これはFeliCaチップというハードウェアが、携帯電話という形でユーザーが購入済みであるためだ。

「モバイル長崎スマートカードでもライセンス料という原価はかかりますが、携帯電話を使い捨てにする人はいません。チャージをして使う繰り返し利用が基本になりますから、長期的に見れば発行原価コストの圧縮ができると考えています」(中塚氏)

●長崎県内の激しい公共交通競争
●バス事業者の利便性向上で乗客減少に歯止めをかける
●おサイフケータイ採用の動機は「利便性向上」と「コスト削減」
●モバイル長崎スマートカードの今後

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《神尾寿》

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