【AutoStanding】縮小するカー用品市場で反攻作戦を練る

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イエローハットがカー用品販売の商品戦略(MD)で提案型の新手法を導入する。従来は用途・機能別を中心に売れ筋商品や用品メーカー毎に陳列していたものをユーザー視点に変更。車種に合わせたメンテナンス商品や装飾品などの関連商品を集積した提案型の売場作りに変更する。

主要顧客層である30代のニューファミリー層に訴求した店舗形態を重視しており、サービス向上による売上増を狙うものである。

◆縮小するカー用品市場

カー用品市場は近年縮小傾向にある。自動車用品小売業協会が纏めた04年度の総市場額は4717億円で既存店売上高、客単価、来店客数のいずれの数値も前年度比マイナスである。

カー用品市場の小売店上位にあるイエローハットもその影響を受け、年々売上は減少しており、2005年3月期の連結決算で売上高1174億1100万円、当期利益8億9700万円と2期連続で減収となっている。

カー用品市場の落ち込みの原因は消費者のライフスタイルの変化と言われている。若者の支出は自動車関連以外(携帯電話など)へのウェイトが高まり、ニューファミリー層は家族のコミュニケーションを大切にするため、個人の嗜好でクルマ選びをせずにミニバンなどの家族向けクルマを選択する。結果、カーナビ、カーオーディオなどでもこだわりを持たずに標準装備や安価でシンプルなものを選択する傾向にあるという。

つまり、クルマにこだわりが無ければ、付属用品にもこだわらない人が増えたということである。

◆来店客数の減少と購買志向の変化に対応する

従来のカー用品店の来店客の中心は、自分のクルマの走行性能を向上させたり、ドレスアップしたりする、いわゆる、クルマ好きな人であり、店舗側が用途・機能別に豊富な品揃えを持って対応している。

しかしながら、昨今、ミニバン、軽自動車の販売増によってオーナーであるニューファミリーや女性などが来店するようになり、店舗の売上構成に変化が現れている。

1:オーディオ・ビジュアル 23.8%(前年比+3.9%)
2:タイヤ・ホイール 23.5% (+5.9%)
3:機能用品 12.3%(−7.0%)
4:洗車・オイル・ケミカル 8.6%(−10.2%)
5:車内・車外用品 8.2%(+0.9%)
6:その他(ホームセンター用品など) 23.6%(+4.6%)
2005年3月期「イエローハット売上構成比率」より

上記より、カーナビなどの高級品は専門性の高いカー用品店で引続き購入しているものの、機能用品や洗車グッズ、オイル、ケミカル等の消耗品販売については落ち込みが前期比7−10%と大きい。

カー用品のうち、消耗品系商品の販売ルートはカー用品店に限らず、ディスカウントストアやDIYショップでも数多く取り扱われており、消費者がカー用品店にわざわざ行って購入する類の商品では無くなっているのではないだろうか。また、クルマにこだわりを求めなくなった人が自分自身でカーケアをしないという背景もあるように推察する。

そこで、消費者の購買志向の変化によるカー用品の売上減を食い止めるためにも販売手法の工夫が必要となったのである。

今般、イエローハットが導入する車種でくくる商品提案型の売場作りは、自分だけの仕様にする楽しみ方をアピールすることで、クルマにこだわりを持たない人の興味を引きつけ、関連商品をトータルで提案し新たな購買を助長するというものである。いわゆる「ついで買い」によって客単価のアップに繋げるのである。

◆本施策の問題点

しかしながら本施策には3つの限界があると筆者は考える。

1つめは前述の売上構成比率に着目すると、販売が減少している機能用品と洗車グッズ等の消耗品類は売上全体の約2割を占めているに過ぎず、また単価も低いため、売上全体を増加させる影響力は弱い点である。

本来であれば売上増への貢献が高いオーディオ、ナビゲーション、タイヤ、ホイールの特定商品の販売をより強化することが望ましいと思われる。

2つめは果たして商品陳列構成を変更するだけで売上が増加するのかという疑問である。ただ見せるだけでは、何のために必要な用品で、どんな役割があり、どのような魅力があるのかを来店客に訴求することは簡単ではない。

既存の展示販売と同じことをしてもクルマにこだわりを持たない人の購買欲を刺激することは難しいであろう。

3つめは、そもそも本件の商品提案型戦略は来店したお客様へのアプローチであり、客単価を上げる効果は期待できても来店客数を増やす効果は見込めないという点である。

売上の増加に必要なことは来店客数を上げることであり、母数が増えれば、客単価アップの効果も高めることが出来る。

◆購買という行動を起こさせる施策にする

上記の問題点3つ全てをクリア出来るようなアイディアではないが、以下施策を商品提案型の売場作りと組み合わせることで、上記の問題を解消し本件の導入効果を高めることは可能ではないだろうか。

(1)販売商品にメリハリをつける

店舗販売は売上増への貢献が高いカーナビ、タイヤ、ホイール等の高額商品の販売に傾注させ、消耗品等の売上構成比率が低下している商品群については店舗販売に加えて新たな販売ルートの活用を考えるものである。

カー用品の中でも整備工場での取り付けを伴わない消耗品類であればコンビニのような小規模店舗で取扱うことも可能である。コンビニ等で取り扱っている商品と当該品の大きさや価格帯は差がないためミニコーナーの設置等による販売提携等の可能性はあるのではないだろうか。

(2)カー用品の試供品を異業種のノベルティにする

カー用品(消耗品)は見ているよりも使った方が購買意思の決定を促進させることは間違いない。従来通り、カー用品店に来店したお客様にサンプルを配布するのではなく、例えば食料品売場にあるペットボトルやビールの箱売りに試供品をサービスする。全く商品を知らない消費者へのリーチが可能となる。

(3)複合施設型ショッピングセンター等への出店を積極化する

既に数店舗存在しているが、集客力のある商業施設へ出店することは来店客の母数を増やす効果が期待出来る。こだわりを持たない人がわざわざカー用品店に足を向けないため、こちらから相手の生活行動範囲に飛び込むのである。

今回の施策である「ついで買い」をさせるための「ついで寄り」の効果が期待出来る。

上記のアイディアも基本的には顧客の視点に立つということでは、商品提案型の売場作りと同じであるが、異なる点は実際に購買という行動を起こさせることを目的としている点である。

クルマに対するこだわりがなくなり、カー用品へのこだわりも無くなっている人が増えている状況では、店舗で待っていてもお客様は購買という行動を起こさない。

カー用品店側が従来の店舗販売の枠にこだわらない施策を打つことが、最終的な目的である売上増を達成するために必要ではないだろうか。

《》

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