ダイハツの新型軽自動車『ソニカ』は、車高の低いセダン系モデルとしては珍しく、運転席と助手席の間に隙間がないベンチシートを採用している。が、このベンチシート、トールワゴンである『ムーヴ』や『タント』のそれとはまったく異なる発想で採用された。
「2002年に企画を立ち上げた当初は、ベンチシートはまったく念頭にありませんでした。走りが爽快なセダンを作るには、シートの質感はとても大切です。そこで、高級車のシートを軽にブチ込んだらどうなるか試してみたんです」とソニカを企画した商品企画部の久保真吾課長は語る。
その高級車とは、何とトヨタのフラッグシップモデル『セルシオ』。軽自動車のボディサイズは全幅1480mmに制限されているため、セルシオのシートはもちろん入らなかったが、大型シートのパッケージングを腐心しているうちに、左右の座面の間隔を詰めてしまえばいい、さらにはいっそくっつけてしまえばいいという発想が出てきたという。
「見てもらえばわかりますが、シートバックや座面の形状も、トールワゴンのベンチシートとはまったく違う異なる、左右セパレートタイプの発展型です。既存の軽自動車のシートとは座り心地がまるで違いますし、ロングドライブでの疲れも少ない」(久保氏)
ちなみにこのシート、コストのほうも同社の軽自動車のラインナップのなかでは高い。「(コスト制約の厳しい)下位モデルに積むのはとても無理」(内装デザイナー)という。コストの割り振りに余裕がある高価格帯のモデルゆえに、シートの高級化が可能となったのだ。