商品企画は旧『ステップワゴン』を追いかけただけなのが明らか。形と造作はそれらしく。でも着座姿勢からして煮詰めが甘く、シートは折りたたみや見た目での広さ感だけで作られ、座ると小さく平板。シートベルトをはじめ安全装備の実態から「4人乗り」が限界の日本のミニバンの中でも、『ラフェスタ』ともども後2列はNGに近い。
走るとライントレース、旋回、全ての動きが曖昧だし、いざというときの挙動も不安。リズム感の悪い揺れや床・車体の震えが絶え間なく続く。電動PSの反力制御も、変速過多でルーズなCVTも机上論型。
商品としての成果に対する「コミットメント」を要求され、大急ぎで形にする。車体の試作ができたら、机上で準備したパワーパッケージと足まわりを組み込むのみで、走りの仕上げはなし。考え、作り込むプロセス抜きのまま商品に。こういうクルマは『セレナ』、『ノート』、『ウイングロード』…ほか。数年間生産し、そこから十数年を生きてゆく自動車という工業製品において、開発期間の短縮は正義ではない。こんな日産の「今」はほんとに心配。心ある人々による再生を待望しています。
■5つ星評価
パッケージング:★☆☆☆☆
インテリア/居住性:★☆☆☆☆
パワーソース:★☆☆☆☆
フットワーク:★☆☆☆☆
オススメ度:☆☆☆☆☆
両角岳彦| 自動車評論家
1951年長野県松本市生まれ。モノごころついた時からクルマが好き。大学・大学院と自動車工学を修め、自動車専門誌を経て独立。自動車の工業製品としての本質を追究した評論活動を行なっている。