当然のことながら『MRワゴン』は軽枠をフルに使い切る。しかし、結果として得られているスタイリングやパッケージングやハンドリングは、どれも軽の中でのベストを狙った仕上がりだ。けっして、白ナンバーの登録車の領域に踏み込んで、その価値観に合わせるかのような高望みはしていない。
ハイトワゴン仕立ての室内空間は、ショルダー部からルーフにかけて絞り込んだぶんだけ、軽を意識させられるが、大人4名に無理のない居住性はじゅうぶん登録車と競合できるレベルにある。
走りは、基本的に現在の軽自動車の枠組みに収まる。デザイン的にも触感的にも華奢なタッチのステアリングホイールの印象そのままに、必要以上に上を見てはいない。登録車的な右肩上がりを期待する評価軸に乗せるよりも、軽快で扱い勝手がよくて気楽につき合えることを重視したようなセットアップ。
軽自動車に精通したスズキらしい見切りの鮮やかさが、このクルマの最大の魅力なのだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★☆
インテリア/居住性:★★★★☆
パワーソース:★★★★☆
フットワーク:★★★☆☆
オススメ度:★★★★☆
伏木悦郎| 自動車評論家
70年代にレースを志し富士スピードウェイで参戦。その間偶然知り合った自動車雑誌編集者にスカウトされる形で業界入り。78年から一貫してフリーランス。FRの魅力に傾倒し国産車によるコンパクトFRの再生が宿願。