世界最大の電気自動車(EV)のエキシビション、EVS22の会場では、大手メーカーだけでなく、多様なメーカーからオリジナリティあふれるモデルを目にすることができた。
自動車部品や旅客機の内装材などを手がける昭和飛行機工業は、6月に発売予告を行っていた軽自動車規格のワンボックスEV『eVAN』の市販モデルを出品した。
今年6月に発売予告されていたモデルで、スバル『サンバー』のボディに最高出力40kW(54ps)@3780rpm、最大トルク103Nm(10.5kgm)@3710rpmのモーター、スイスの企業が実用化したニッケル食塩(Ni/NaCl)バッテリーを搭載している。価格は350万円。
最高速度は90km/hと低いが、10・15モード走行時の航続距離は150kmと、軽自動車サイズのEVとしてはかなり長い。これは搭載しているニッケル食塩バッテリーのキャラクターがそのまま反映された特性だ。
瞬発力をあらわす質量出力密度が180Wh/kgと通常のニッケル水素バッテリーに比べて格段に低い半面、電力を蓄える能力のめやすである質量エネルギー密度は180Wh/kgと、現行のリチウムイオン電池と比べても格段に高い。加えて、充放電2000サイクル以上と、寿命も長い。動力性能より航続性能と耐久性が求められる、商用車向きの電池なのだ。
会場に出品されたモデルのボディ側面は、温暖化で水没の危機に瀕している南太平洋の島国、ツバルの珊瑚礁の写真で彩られていた。ニッケル食塩電池には、未使用時にも保温のために小電力を自己消費してしまうという欠点もあるが、環境技術の多様化という観点では、非常に興味深いモデルである。