大矢アキオ『喰いすぎ注意』…邪道スパゲッティの誘惑

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大矢アキオ『喰いすぎ注意』…邪道スパゲッティの誘惑
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下敷きパスタ

隣国フランスにおけるパスタ料理も、イタリア人にとって満足のいくものではない。アルデンテ(歯ごたえのある固さ)という言葉とは無縁なくらい、グデングデンに茹でるからだ。

そのうえ多くの場合、スパゲッティをはじめとするパスタはプリモピアット(第1の皿)ではない。メインディッシュの付け合わせや、ときには下敷きになっているのである。実際、ボクもそういう虐待されたスパゲッティにフランスで遭遇する。

しかし、だ。実はあるとき意外なことに気づいた。上に載っている肉や魚の汁がしみている。茹で過ぎのパスタゆえ、さらに風味をよく吸っている。それが、なかなかうまいのだ。今や、パスタの本場に住んでいながらも、あの邪道な下敷きパスタがたまらなく食べたくなるときさえある。

ふと思い出したのは、子供の頃、弁当箱の脇に入っていたスパゲッティだ。のびた上に、隣の豚カツから流れたブルドッグ中濃ソースの味がしみていたが、あのフュージョン感覚は独特だった。フランスの下敷きスパゲッティには弁当の幻影があり、たまらないノスタルジーが秘められている。

日頃タバスコ&筒パルメザンを嘆き、日本の婦女子の前で「イタリアじゃアルデンテが基本ざんす」とか言ってスカしているのに、実はそんな邪道スパゲッティがたまらなく好きとは。

自己矛盾に悩んでいる。

筆者紹介:大矢アキオ Akio Lorenzo OYA --- 国立音楽大学卒。自動車誌『SUPER CG』(二玄社)記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わず多くのファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』における軽妙な語り口も好評。主な著書に『イタリア式クルマ生活術』、『幸せのイタリア料理!』、『カンティーナを巡る冒険旅行』、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(いずれも光人社)。

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《大矢アキオ Akio Lorenzo OYA》

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