3 | 己に進化の跡なし |
そんなものを見つけてはつい買ってしまうので、いつも我が家の台所は“美人商品”でいっぱいである。
しかし食品を味以外で選ぶツケは回ってくる。考えてみたらボク自身はビールを飲まないので、妖艶な瓶の栓をいっこうに開ける機会がない。女房は、「アタシ、このホールトマトの味嫌いヨ」などと言って消費してくれない。うっかりすると賞味期限を切らせてしまい、「もう無駄な買い物しないで」と怒られる始末だ。
ふと、添付のブロマイド欲しさに『仮面ライダースナック』を買うものの、肝心のスナックは「甘すぎる」と言って一切手をつけず、親に怒られていた子供時代を思い出した。仮面ライダーがお姉さんに変わっただけで、まったく進化していない自分が情けなくなった。
筆者紹介:大矢アキオ Akio Lorenzo OYA --- 国立音楽大学卒。自動車誌『SUPER CG』(二玄社)記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わず多くのファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』における軽妙な語り口も好評。主な著書に『イタリア式クルマ生活術』、『幸せのイタリア料理!』、『カンティーナを巡る冒険旅行』、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(いずれも光人社)。 |