【伊東大厚のトラフィック計量学】道路からのCO2を測る 環状道路と東京の渋滞 その2

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【伊東大厚のトラフィック計量学】道路からのCO2を測る 環状道路と東京の渋滞 その2
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環状高速道路の整備効果は?

環状道路は、渋滞軽減効果があると言われているが、どのくらい効果があるのだろうか。前回紹介した首都高速中央環状線(中環)の王子線を例にとり、効果を検証してみよう。2002年12月、中環王子線(江北〜板橋間、7km)が開通した。王子線は、東京都心の北側、大宮方面を結ぶ5号池袋線と、東北道に続く川口線との間を結んでいる。(図1)

◆王子線開通前のシミュレーションでは…

開通前のシミュレーションでは、王子線は、いくつかの効果が期待されていた。
まず、交通集中の分散である。開通前、都心と東北道や常磐道方面を行き来する際、首都高速は、ルートが6号向島線しかなかった。途中にある箱崎ジャンクションは、交通が集中し、渋滞することで有名だった。

王子線の開通で、東北道方面は5号池袋線経由のルートもとれるようになる(図2)。また、5号池袋線と湾岸線千葉方面も、ずっと中環を利用できるようになり、都心を通らなくても済む(図3)。

こうした交通の分散や、一般道からの利用増による渋滞の軽減などは、利用者の便益として金額換算が可能だ。中環王子線の場合、便益額は年間870億円と試算されていた。
渋滞が減るとCO2も減る。CO2は、王子線開通時で年間1万トン、さらに新宿線まで開通すると2万5千トンの削減が見込まれていた。

◆実際の変化は?

首都高速道路公団(当時)は、王子線開通前後の交通量調査などから、その整備効果を発表している。資料によると、東京の首都高速の渋滞量が1割減ったこと、6号向島線や都心環状線の北側などで交通集中が緩和されるといった効果があった。

開通によって、交通の流れが変わり、区間によって交通量が増減した。また、その影響は、6号向島線や5号池袋線など王子線周辺だけに留まらない。4号新宿線、中環の外側にある東京外環の交通量が減少するなど、広範囲にわたっている。(図4)

ただ残念なことに、開通後、東京都心部のCO2は減ったのか、検証されていなかった。そこで筆者は、日本自動車工業会や日本自動車研究所とともに、王子線開通によるCO2削減効果を検証することにした。

図4に示すように、環状道路は、開通の影響が広範囲に及ぶ。CO2を計算するには、一般道路も含め、東京23区など、広い地域の開通前後の交通量と速度データを必要とする。次回は、その結果を紹介したい。

《伊東大厚》

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