【池原照雄の単眼複眼】日産、自縄自縛型コミットメントの見直し好機

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【池原照雄の単眼複眼】日産、自縄自縛型コミットメントの見直し好機
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06年度の世界販売は350万台割る水準に

日産自動車が中期計画「日産バリューアップ」(2005-07年度)で掲げたコミットメント(経営公約)の達成時期などを修正することとなった。日産を驚異的な再建に導いたカルロス・ゴーン社長のコミットメント経営にとっては初の未達となる。挫折といえば挫折だが、これを奇貨として自縄自縛型のコミットメント手法を見直す手もある。

バリューアップでは、最終年度翌年の08年度に世界販売を420万台に拡大させることを柱に3項目の経営公約を掲げた。しかし、2年目である06年度の世界販売や業績は、計画に対して大幅なショートとなった。373万台を目指していた世界販売は、日米の不振により350万台を割り込む水準となった模様だ。

420万台をクリアするのは今後2年で70万台強の拡大を図らなければならない。市場動向や日産の商品計画から見ても絶望的な数字だ。残るコミットメントである「業界トップレベルの営業利益率」と、自動車事業での「投下資本利益率(ROIC)平均20%」も極めて難しい。

◆甘かった下ぶれリスクの見積もり

06年度の営業利益率は、下方修正した業績予想ベースで7.4%にとどまり、9.5%の予想としているトヨタ自動車からは2ポイント余り引き離される。資本効率を示すROICは、営業利益を固定資産と運転資金の和で割ったものなので、利益が細る分、低下する。

バリューアップが未達となるのは、下ぶれリスクの見積もりが余りにも緩かったということに尽きる。原材料費や原油価格の上昇が収益や市場変動に及ばすリスクはある程度想定していたのだが、新モデルが極端に減少する商品計画の「非連続性」は、過小評価されたように見える。

コミットメントの柱である世界販売計画は、各市場の担当役員が「必達目標」として出した数字を積み上げて形成される。その過程でリスクを緩く見積もったというよりも、ある程度は眼をつぶらざるを得なかったのではないか。「挑戦的」でないと、担当役員の評価も芳しくないものになるからだ。

◆「ニュー・ゴーン流」が見えてくる?

過去2度の中計である「リバイバルプラン」(00-01年度)や「日産180」(02-04年度)では、そうした挑戦が必要であった。危機的状況下での再建から成長への基盤を固める計画だったからだ。しかし、「180」終了後にサプライヤーや株主といったステークホルダーが求めたのは、歪を抱えたままの急成長より、安定度の高い持続的成長の方だろう。

バリューアップが未達となっても、日産の業績は世界の主要プレーヤーのなかで高いレベルにある。06年度の営業利益率は、トヨタに次ぐ世界2番手の儲け頭であるホンダと同水準だ。余力のあるうちに、がんじがらめのコミットメントを解き放ち、「ニュー・ゴーン流」を打ち出す好機でもある。

《池原照雄》

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