【伊東大厚のトラフィック計量学】シンガポールの交通政策に学ぶ その4

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【伊東大厚のトラフィック計量学】シンガポールの交通政策に学ぶ その4
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成功の要因

シンガポールの都市交通政策の成功は、ロードプライシングなど「需要管理」のみによって、もたらされたわけではない。

円滑で快適な都市交通が実現したのは、「交通と土地利用計画の統合」、「道路網の拡充とその最大限の活用」、「公共交通の改善」、「道路利用の需要管理」という、陸上交通戦略の4本柱を政策パッケージとして、バランスよく実施したことにある。

このうち「需要管理」は、規制手段であるがゆえ、利用者を納得させることが重要だ。片側2車線以上ある幹線道路、サービスレベルが高く低料金な公共交通や駐停車スペースをはじめ、交通インフラの整備によって、利用者は、便利さ快適さを実感し、需要管理という「我慢」も受け入れる。複数の施策をパッケージ化する理由は、ここにある。

◆日本の交通政策は?

こうした観点から、日本の交通政策を眺めてみよう。例えば、「道路網の拡充とその最大限の活用」という点はどうだろうか。筆者の記憶する限り、「道路の有効活用」が、我が国の交通政策で明示されたのは、ここ数年のことだ。ETCを活用した高速道路の料金割引やインターチェンジの増設、一般道路では路上駐車対策などが挙げられる。

ETCの普及で、将来、混雑時間帯など高速道路でロードプライシングが導入される可能性もある。しかし、まず上記のような施策で、利便性を上げることが重要だ。

「交通と土地利用計画の統合」も示唆に富む。我が国は、本格的な少子高齢社会の到来で、これからの国土利用のあり方は大きな問題だ。シャッター商店街、住民の高齢者化が進む郊外の「ニュータウン」、……既に、高齢者の都心居住を進めている地方都市もある。

交通インフラの寿命は50−70年で、これから作り直しが増えていく。数少ないリセットのチャンスを活かさなければならない。

◆一度だけ渋滞に遭遇

筆者がシンガポールを訪れたのは、5年ほど前である。数日間の滞在中、一度だけ渋滞に遭遇したことがある。バレンタインデーの夜のことだ。シンガポールのバレンタインデーは、「チョコ」ではなく、郊外のレストランで夕食、というのが一般的らしい。

郊外で食事となると、クルマで、ということになる。我々も(男ばかりではあったが)、夕方、クルマで食事に出かけた。なるほどレストランは混んでいた。その帰り道、高速道路インターチェンジの合流で、ひどい渋滞にあったのだ。

それまで、ラッシュ時でも混雑しない、路上駐車ゼロなど、日本の交通事情とは大きく異なる、シンガポールの「立派な」交通システムと交通マナーを目の当たりにしてきたのだが、彼らも、普段は少し我慢しているのかなと、何となく、ほっとしたことを覚えている。

《伊東大厚》

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