日産新技術『ポップアップエンジンフード』…歩行者の傷害軽減を目指す

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日産新技術『ポップアップエンジンフード』…歩行者の傷害軽減を目指す
日産新技術『ポップアップエンジンフード』…歩行者の傷害軽減を目指す 全 7 枚 拡大写真

日産自動車の新安全技術「ポップアップエンジンフード」は、今秋発売予定の『スカイラインクーペ』に初搭載される歩行者保護技術だ。万一、歩行者をはねてしまったときにボンネットの後端を瞬間的に90mmほど跳ね上げ、歩行者を柔らかく受け止めるというもの。

近年、歩行者への攻撃性の低下はクルマの安全技術向上のなかでも重要視されているテーマのひとつだ。歩行者とクルマがぶつかったとき、とくに危険なのはボンネット下にあるエンジンなど固い部分。その固い部分に激しく当たらないよう、エンジンとボンネットフードの隙間をできるだけ大きく取るよう設計するのが今どきの設計のセオリーとなっている。が、このクリアランスを大きくしようとすると、フロントデザインはボンネット中央が盛り上がった、ずんぐりとしたものになりがち。

「歩行者への攻撃性の削減と、低いボンネットによる流麗なデザインを両立させるのが、ポップアップエンジンフードの意義です」(日産関係者)

システムはバンパー3か所に設置された衝撃感知用のGセンサー、コンピュータ、ボンネットを跳ね上げるためのアクチュエーターなどで構成される。シミュレーションやダミーとの衝突実験を繰り返し行ない、人をはねたときの衝撃のパターンを徹底的に研究。作動領域である時速20km以上のほぼすべての速度域で、誤作動をほとんど起こさないまでにシステムを熟成させたという。

日産は8月6、7日の両日、マスメディアを集めてスカイラインクーペ対ダミーの公開衝突試験を行なった。立っているダミーをスカイラインが時速35kmではねるという設定だったが、肉眼では衝突した瞬間にすでにボンネットが跳ね上がるという印象だった。

「実際のタイムラグは、衝撃検知からコンピュータが指令を出すまでが100分の1秒、それからアクチュエーターがボンネットを跳ね上げるまでが100分の2秒程度。合計して100分の3秒くらいになります」(日産関係者)

ボンネット跳ね上げ式の歩行者保護システムは、日本に今年投入された現行ジャガー『XK』が市販車として初めて実装しているが、こちらはボンネット後端がスイングする逆アリゲーター式。整備性のよい普通のボンネットのヒンジ部分を工夫し、ジャガーと同等の効果を得たという点が、ポップアップエンジンフードの最大の意義であろう。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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