【東京モーターショー07】日本精工のトロイダルCVT

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【東京モーターショー07】日本精工のトロイダルCVT
【東京モーターショー07】日本精工のトロイダルCVT 全 2 枚 拡大写真

幕張メッセ北ホール、部品コーナーにある精密加工部品大手、日本精工ブースで、自動車メーカー関係者、来場者を大いに面白がらせているのが「左右独立トロイダルCVT」だ。

トロイダルCVTとは、ギア段を持たずローからオーバードライブまで無段階に変速比が変化する無段変速機(CVT)の一種。普通のCVTが金属ベルトを使用しているのに対し、トロイダルCVTは2枚のディスク(円盤)でローラー(ころ)をはさんだような構造で、ローラーの転がりを介して動力を伝達する。変速はローラーの傾きを変え、実効回転半径を変化させることで行う。

普通のCVTはもちろん、ギア式の有段ATと比べて変速機内部の摩擦ロスがきわめて少ないのが特徴だ。

今回の「左右独立トロイダルCVT」は、入力側のディスクを普通のクルマのデファレンシャルギアにあたる部分に置き、その両側にローラーと出力側ディスクを配置している。

これまで片面を使っていた入力側ディスクの両面を利用するという、ユニークな構造だ。直進時は両側が等速で動いているが、コーナリング時など左右輪の回転数を変える必要が生じたときには左右の変速比を独立して変化させ、左右輪の回転数を最適化させることができるという。

デファレンシャルギアを使った普通のクルマは、一方の車輪に伝わるトルクが増えると、反対側の車輪に伝わるトルクは小さくなってしまうが、左右輪を完全に変速比で制御しているこのシステムでは、両輪のトルクを自由自在に制御できる完全なトルク・オンデマンンド。

既存のアクティブトルク配分システムと比べても格段に高機能であり、2WDのスポーティカー、レースカーなどには相当に適した変速機構だろう。

トロイダルCVTのネックは価格。部品製造に“超”が付くほどの精密加工技術が要求されるからだ。

日本精工の部品は世界唯一の量産トロイダルCVTである日産『セドリック』/『グロリア』や『スカイライン』向けのトランスミッションに使われてきたが、あまりに高価格だったためほとんど売れず、今はモデル廃止となっている。

日本精工関係者は、「量産さえすれば、コストは普通のATと変わらない。大規模な設備投資を行うことができるくらいの生産量を見込めるような商品計画が立つよう、自動車メーカー各車さんと共同で研究していきたい」と、コスト高の解消には楽観的だ。

今回のシステムは許容トルクが200Nm級と、排気量2リットル以下クラス向けのものだが、日本精工のエンジニアは「ご希望とあらば500Nmでも1000Nmでも作って見せる」と豪語する。また、オーバーオールの変速比は5前後だが、これについても7程度までは容易に引き上げられるという。

はたしてハイテク変速機、トロイダルCVTが我が世の春を謳歌する時代はやってくるか!?

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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