多機能型消防車、登場…消防団に助っ人

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多機能型消防車、登場…消防団に助っ人
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●後継者不足に悩む消防団

全国の「消防団」の人手不足が深刻だ。消防団の全国組織である財団法人日本消防協会では、団員の人手不足や機材の近代化を補う助っ人として、“多機能型消防車”を配備することになった。

火災の消火活動や被災者の救護活動の担い手は市町村によって組織・運用される「常備消防」であるが、団員が生業をもちながら緊急時に消防活動に従事するのが「消防団」であり、火災現場で常備消防を支援する。

全国の消防団員は89万5293名(2007年10月現在・日本消防協会調べ)。10年前に比べると約7万人の減少となっている。

記者が居住する東京・港区内にも地元住民などで組織される消防団の機械倉庫があり、倉庫のそばを通るごとにキビキビした訓練の様子に足が止まることも少なくない。団長へのにわか取材が消防団参加の勧誘に変わるくらい、全国の消防団員数が減っている。少子高齢化や活動の厳しさによる敬遠で、頼みの若年層が集まらないという。そのためこの消防団では中高年の掘り起こしや女性団員の募集にも力を入れるなど、従来の訓練方法を方向転換する仕組みを模索中とのことだ。

団員不足に悩む消防団の状況は地方でさらに深刻で、過疎化に代表されるように従来の消防団組織が縮小されたり改変を余儀なくされる地域も少なくない状況にある。加えてここ数年に渡り実施されてきた“平成の市町村大合併”で集落や村までが無くなる時代になっていることも、消防団組織に影響をあたえている要因なのかも知れない。

昨今のように火災のみならず大規模地震や台風、大雨などによる自然災害の発生と拡大、人命損失が問題にされる中、常備消防だけでは補えない部分での消防団の役割が求められている。

●現場の意見を盛り込んだ新型消防車

日本消防協会では、2007年度と08年度の2か年計画で全国都道府県に1台ずつの“多機能型消防車”(47台)を交付することになり、今回その半分の24台が配備されることになった。消防団向け多機能型消防車の概要は以下の通り。

ベースとなるシャーシはいすゞ自動車の小型トラック『エルフ』を採用。ボデー全体の架装は消防車づくりで長年知られるモリタ社。運転者を含む6名の隊員が乗車できるダブルキャブ仕様で、雪道や災害時などの走行性を考慮した4WD車となっており、車高の高い分、団員の士気もあがるスペックとなっている。

防災機材が収納されるキャブの後部は不燃構造のFRP樹脂製のボックスで、両側面がガルウィング式扉による全面開口構造。そして後面が跳ね上げ式扉による全面開口構造となっており、狭い道路などでも機材の取り扱いがしやすくなっているのが特長だ。骨格部分にアルミを、外板に樹脂を用いたのも、装備重量が重い消防車ならではの事情となっている。

エンジンは3.0リットル、110PSのディーゼルを搭載。5速マニュアルミッションの装備となる。もちろん防災機材使用のための電源供給などのために、PTO=パワーテイクオフ(動力抽出)機能も備わる。

搭載される装備品は30品目を超える重装備で、いかに消防車の機能が多様化していることを物語っている。主な装備品としては、小型の消防ポンプ、手動式の油圧カッターとエンジン式のカッター、チェーンソーなど。さらに人命救助に欠かせない用具となっている自動体外式除細動器、そして足付きの四つ折担架など、様々な災害や救命に関る装備を搭載している。

消防団にとって少ない団員で多機能な活動ができる態勢が整うので、人材確保や作業性の改善などに寄与しそうである。

消防車の値段は、通常では小型車クラスでも装備によって軽く1000万円を越えるのも珍しくないくらい高価な災害対策装備である。 今回は現場の意見を集約しつつ使用時の事例を参考に搭載装備を整理した関係で、価格は消費税込みで798万円に納まったという。47都道府県分では3億7500万円となるが、台数の増加を促す予算措置は必要であろう。

《浜田拓郎》

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