3 | 自転車のカタチは変えられるのか? |
地面を足で蹴る2輪の乗り物が18世紀末に登場し、チェーン駆動の今の自転車の原型は早くも1885年に発明されている。以来123年、細かな改良が進み、強度と安全性は大きく進歩し、アイデアを凝らした様々な自転車も登場したが、特にスピードを競う究極のマシーンの形は1885年のローバー号以来大きく変わっていない。
なぜカタチが変わらないかというと、このローバー号はすでに、人が最も大きなパワーを出せる足の動きと体型に最適な、また空気抵抗まで配慮した運動力学に適った設計をしていたからだ。
1980年代には徹底的に風洞試験が行われ、人の動きと一体での空気抵抗の低減が図られたが、やはり基本形は殆ど変更の余地が無い事が立証された。
自転車は今後も形を変えずに材質と加工技術を中心に軽量化と重量バランス、ブレーキング時の安全性に大きく影響するフレーム剛性と振動特性の改良を中心に進化し続ける。腕時計と同じで、性能が良くなればなるほど、作りが精緻になればなるほど、僅かな差に高額な対価を惜しまないマニアックな顧客は増える一方だ。
だからこそパナソニックは、そこにターゲットを絞った電動自転車を開発したわけで、パワーユニットカバーにあと数万円コストがかかったとしても、こうした顧客に侮られないことの方が大切だと思う。
D視点: | デザインの視点 |
筆者:荒川健(Ken ARAKAWA)---DESIGN FORCE Studio b:stile代表。多摩美術大学卒業。1975年三菱自動車入社、初代『ミラージュ』セダンや85年発表のふそう空力走行実験車『MT-90X』を担当(Cd=0.378、大型トラックでの世界記録を達成し15年間破られなかった)。88年マツダにヘッドハントされユーノス『500』、ユーノス『プレッソ』/オートザム『AZ-3』などのチーフデザイナーを歴任。1995年独立しDESIGN FORCEを主宰。パソコンテレビGyaO「久米宏のCAR TOUCH!」にレギュラー出演していた。早稲田大学理工学術院非常勤講師。