3 | 異文化の強みと弱み |
画家やファッションデザイナーなど、創作的な仕事をとする人々の多くは,新しいものに敏感で、異文化への興味も強い。
古くは、印象派の画家が、これまでの西洋絵画にはない浮世絵の大胆な構図に大きな影響を受けた。また、ファッションの世界でも30年ほど前に、山本耀司と川久保玲がパリコレにデビューし、「黒の衝撃」を与えたことは有名だ。喪服のイメージの強い黒の採用や、和服では普通の直線裁ちなどがヨーロッパでは驚きをもって迎えられたのだ。
高級品の構成要素として、伝統、高価額、高品質、そして美しさなどがあげられるが、憧れの舶来品のように非日常的であることも大きな要素だ。欧州のラグジュアリーカーのユーザーも、異文化の雰囲気を好む目立ちたがり屋が多い。
しかし、多数を占める一般の人々は、目立たなくて馴染んだものを好むので、欧州のラグジュアリーカーに乗ることを躊躇する傾向がある。そんな中で、ひところの日本の中型車のデザインに似た感じのA5なら受け入れられる可能性も大きい。ラグジュアリーカーの常識を打ち破ったアウディの冒険が成功すれば、新しいタイプのラグジュアリーカーの可能性だけではなく、マーケット拡大も期待できる。
D視点: | デザインの視点 |
筆者:松井孝晏(まつい・たかやす)---デザインジャーナリスト。元日産自動車。「ケンメリ」、「ジャパン」など『スカイライン』のデザインや、社会現象となった『Be-1』、2代目『マーチ』のプロデュースを担当した。東京造形大学教授を経てSTUDIO MATSUI主宰。【D視点】連載を1冊にまとめた『2007【D視点】2003 カーデザインの視点』をこのほど上梓した。