【池原照雄の単眼複眼】日産は「ゼロエミッション」よりハイブリッドでは?

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【池原照雄の単眼複眼】日産は「ゼロエミッション」よりハイブリッドでは?
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EVは「企業戦略の中心に位置」

日産自動車が電気自動車(EV)事業に力点を置いてきた。新中期計画「GT2012」の柱に「ゼロエミッション車(=EV)で世界のリーダー」を掲げる一方、EVに搭載するリチウムイオン電池の量産工場建設を決めた。環境対応車展開の遅れを「ゼロエミッション車」をシンボルにして巻き返す狙いだが、「本命」へのテコ入れがよく見えてこない。

「GT2012」発表の際、カルロス・ゴーン社長は、CO2(二酸化炭素)の排出量を「10 - 30%削減するだけでは解決にならない」としたうえで、日産にとってゼロエミッション車は「企業戦略の中心に位置」すると強調した。クリーン・ディーゼルやハイブリッドは環境負荷軽減への「大事なステップ」と認めるものの、「解決策の一部に過ぎない」との認識も示した。

まさに指摘の通りだが、EVや燃料電池車というゼロエミッション車=クルマからのCO2排出がゼロという意味で、現状では電力や水素を得る際にはゼロではない=の本格普及に一足飛びでいけるわけではない。

◆先駆的ではあるが厳しい量の確保

今回、2012年までの「グローバルな量販」を掲げた日産のEVも、大きな「量」を確保するのは難しそうだ。計画では10年度に米国と日本に投入した後、11年度には仏ルノーとともに米ベンチャー企業「プロジェクト・ベター・プレイス社」と協力し、イスラエルとデンマークでも販売する。

ただ、日本では神奈川県内、米国ではカリフォルニア州に限定。イスラエルなども市街地中心のコミューター的な位置づけとなる。「潜在需要はあるものの、商品がない」(ゴーン社長)現状を打破する先駆的な挑戦は高く評価されてよい。

しかし、環境対応戦略としてのプライオリティには首をかしげる。日産はクリーンディーゼル車を今年秋に日本市場に投入する。これも1番乗りで先駆的だ。

問題は当面の本命技術であるハイブリッド車(HV)の出遅れにある。トヨタ自動車からのシステム調達に加え、10年度には独自開発のHVを投入するのだが、差し当たっては大きなボリュームは計画していないようだ。

◆見えてこないHVの具体計画

19日に発表したリチウムイオン電池の生産計画からもそのことがうかがえる。同電池は09年度に1万3000台分でスタートし11年度には6万5000台分に増やすという。当初は電動フォークリフトに搭載し、順次EVとHVにも搭載していく。

さらに、商談が成立すれば日産以外のメーカーにも供給する方針。独自HVへの「割り当て」は不明だが、いずれにせよ数万台にとどまる。ゴーン社長はかつて、HVは「ニッチ市場」と指摘していたが、もはやそうではない。ここ数か月、トヨタの米国での新車販売のうちHVは15%程度を占めるようになった。

09年にホンダが投入する新HVは、年20万台の世界販売を目指す量販モデルとなる。株主などステークホルダーが日産の環境戦略で知りたいのは、キャッチフレーズでなく、より具体的なHVの事業計画ではないか。

《池原照雄》

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