【池原照雄の単眼複眼】大乱世も基本は原価改善と開発強化

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石油危機や円高上回る未経験ゾーン

9月中間決算と通期見通しの取りまとめに入っている各社の経理・財務部門は、連日の長時間残業だろう。世界的な新車販売の落ち込みに加え、対ユーロでの大幅な円高や株安といった業績悪化要因が急浮上してきたからだ。

金融システムの動揺による世界同時不況がどこまで続くのか不透明で、業績予想は見通しづらい。ただ、日本メーカー各社は業績がへこんでも危機的状況に陥るわけではなく、取り組むべきテーマも、結局は平時と変わらないのではないか。

各社の経営陣にとって現下の混迷は、1973年の第1次石油ショック、1985年のプラザ合意後の円高時を上回る未経験ゾーンだろう。

まず、世界的な需要の冷え込みがある。国内市場は依然として底打ちせず、今年度上期は30年ぶりの低水準となった。最も依存度が高い米国の9月は、年率で1200万台を割り込み、不振は小型車にも波及してきた。

◆原油安は資源国市場の懸念材料に

頼みとしていた新興諸国でも、夏場には中国とインドが前年を下回るなど、先進国の景気悪化の影響が出始めている。世界を駆け巡る株安の連鎖は、保有株の減損処理を通じて企業業績の悪化を招くだけでなく、個人の逆資産効果となって、新車需要の低迷を長引かせる脅威となっている。

唯一の好材料は、原材料費の改善につながる原油価格の下落だろうが、これとて、好調に推移してきた中東やロシアといった資源国の新車需要を冷え込ませる懸念の方が大きいのではないか。

気の滅入る要素が一気に押し寄せて来ているが、石油ショックも85年以降の円高も、当時は未経験ゾーンだった。それらを乗り越えた基本は、着実な原価改善の推進と、技術開発の強化だったはずだ。

◆技術パワーを溜め込む好機

石油ショック後には燃費性能が一段と強化された日本車が世界市場に飛躍したし、各社は円高を原価改善のパワーを一層高めるモチベーションとした。円高時に進めた技術開発によるプレミアム車は、為替変動をカバーする収益をもたらした。

現在も、そうした基本は変わらない。とくに環境技術を中心とした研究開発は、手を緩めることはできない。09年3月期の利益は、前期比で半減といった事態も想定されるが、研究開発に向けるキャッシュを政府からの低利融資で賄うといった事態に陥っているわけではない。

いまの混乱は、金融システムの動揺という霧が晴れた後に、日本車が再び世界市場に勇躍するためのエネルギーを溜め込む潜伏期間と捉えたい。

《池原照雄》

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