昨年秋にクラリオンが北米で発売を開始した『Clarion MiND(Mobile Internet Navigation Device:マインド)』。この2月には欧州での発売を開始する他、ほぼ時期を同じくして、最初のバージョンアップを行うことになった。今回はCES2009の開催に合わせ、このMiNDのカーナビ機能を中心に体験することができた。
Bluetooth経由で携帯電話からインターネットにアクセス
MiNDは最先端のカーナビ機能とPC同様のエンタメ機能を一つのモバイル端末に統合した初の端末(クラリオン)で、自宅やホットスポットではWiFiで、屋外では携帯電話とBluetoothでインターネットへの接続が可能になる。そこで、今回の体験走行では携帯端末BlackBerryを経由してインターネットに接続。目的地検索や交通情報のダウンロード等に利用した。なお、Bluetooth端末は5台まで登録でき、一覧画面で簡単に端末は切り替えることができる。
MiNDを起動すると、すぐにBluetooth接続できる端末を自動的に検索するモードに入り、接続は完了。これでいつでもGoogleを使ったローカルサーチが可能になる。そこで、まずはラスベガス市内にある日本食専門店『横浜海源楼』を目的地に設定してみることにした。
通常ならここでカーナビに収録済みのデータを使って検索する。しかし、ここは他のPNDでも試してみたのだが、検索することができなかった施設でもある。MiNDでもローカルデータには該当がなかった。そこで活躍するのがMiNDに搭載されたGoogleのローカルサーチ機能だ。この機能を使えば、PCで使うのと同様に思いついたキーワードを入力すればそれに該当する施設名リストが表示されるのだ。
◆まさにネット検索エンジンらいくな使い勝手
結果を出すまでの流れを追ってみよう。
ナビゲーションモードの「Google」を押すと最初に表示されるのが、目的地を探す4つのカテゴリー。今回は目的地が近くにあることがわかっているので、周辺検索に相当する「Near by」を選ぶ。続いてキーボードが表示されるので、「LAS VEGAS」「YOKOHAMA」の二つのキーワードを入力してみた。するとそのキーワードを含むリストが表示され、その中に目的の「横浜海源楼」を発見。そこを選ぶとピンポイントで場所を地図上に表示することができた。こんなにも簡単に対象地が探し出せるとは思っても見なかった。その扱いやすさは一目瞭然だ。
また、表示されたリストにはそれぞれ5段階の☆印がついている。これはGoogleのRaitingデータをそのまま利用したものだが、クラリオンは日本製のカーナビでもこうした機能を搭載し、評価されていただけにそれを取り入れたということだろう。すべてのリストの表示されるわけではないが、レストランなどを探すときに目安となるはずだ。リストから目的地を選択すると、目的地にまでの直線距離や住所が表示され、その下には「RouteTo」が表示されるので、それを選択すればルート探索が始まる。また、目的地情報に電話番号情報があるときはそのまま電話がかけられるし、URLがあればホームページの表示も可能になっている。
◆長距離でもルート探索に待たされることはない
総距離が数マイルしかないこともあるが、目的地までのルート探索は数秒で終了。これではテストにならないと、ラスベガスからニューヨークまでのルートを探索してみたが、やや時間はかかったものの、それでも10秒足らずで処理を終えた。地図のスクロールも試してみたが、白地を出すことなくスムーズに地図を表示する。これらの処理速度はすごく速い!という気はしないけれど、実用上は十分な実力を備えていると言えるのではないだろうか。
表示される地図はNAVTEQ製で、ハワイ、アラスカを含むアメリカ全土とカナダをカバーするものの、検索データの収録件数は200万件とやや少なめ。だからこそ、Googleを使ったローカルサーチが有効でもあるのだ。一方、マップスケールは10m - 750km。2D表示と3D表示の切り替えにも対応。日本製カーナビにあるような市街地図の表示は行わないものの一方通行表示も備え、ガソリンスタンドやレストラン、カフェ、駅といった主要施設のランドマークの表示も行う。ラスベガスではホテルなどの主要施設は建物の輪郭を表す家形図の表示もできていた。とはいえ、この案内自体は一般的なPNDと特別変わった部分は感じない。測位も一般的なPNDと同様にGPSのみの対応だが、ラスベガスでは測位が不安定になる状況はまったくと言っていいほどみられなかった。
◆ワンタッチで必要な機能が呼び出せるUI設計
ルート探索を終えてクルマを発進させると即座にルート案内が開始された。分岐点に近づくと画面左上には分岐点までの距離と進行方向が矢印で示される。日本のカーナビに多く見られる交差点拡大図は表示しないが、アメリカのようなわかりやすい道路環境ならこれで十分。むしろ道路一つひとつにストリート名が必ず付与されているアメリカでは、音声によってどのストリートを走行するかを案内する機能が役立ったほどだ。
また、よく見ると昨年11月に発売した時点と違い、地図が何となくスッキリとしている気がする。これについて、クラリオン商品企画部マーケティンググループ課長の岡田元己氏は、「ナビのときの誘導画面のグラフィックを改良して見やすくし、よく使うアイコンは左側に寄せて配置しています」と話す。つまり、左ハンドル車がほとんどのアメリカではよく使うボタンは左側にあった方がいい。その判断から、画面左下には様々な機能がワンタッチで呼び出せるメンテナンスボタンを用意。これによって、ドライバーはワンタッチで必要な機能が呼び出せ、様々な状況にスピーディに対応可能となったのである。
見逃せないのは情報ウィンドウを表示させると、そこには天気予報やニュース、道路交通情報が一覧で表示されることだ。この日もラスベガスのLas Vegas Drive(通称:ストリップ通り)は激しい渋滞が発生していたが、その状況を数字のランキングで表示。時間と共にその混雑状況が変化するのを確認することができた。ただ、この渋滞を避けてルート探索を行うようなことはできず、あらかじめホームモードで道路状況を確認し、それを確認しつつ道路を選択するという使い方が有効になるようだ。岡田氏によれば、あらかじめ登録しておけば、よく使う道路の混雑状況が一覧で確認できるという。
◆ネットを活用したコミュニケーション機能も豊富
この日の試乗では、あくまでカーモードだけの体験となった。MiNDにはこれ以外にモバイルモードで使えるブラウザ機能やYouTube、myspaceといったネットワークの利用、さらにはリアルプレイヤー使用によってマイクロSDに収録した音楽やビデオ映像、静止画像の再生にも対応する(対応フォーマット:mp3, mp4, mpg, mpeg,rm, ra, rv, rmvb, aac, ogg, wav, wma, wmv,3gp, jpg, jpeg, png, gif, bmp)。
さらに、専用のポータルサイトも用意されていて、ここではユーザーが使いやすいように様々なカスタマイズ設定ができるようになっているという。また、ディスプレイはサイズこそ小さめの4.8型ワイドVGA(800×480ドット)であるが、表示される情報量に不足は感じなかった。本体の重量はスタンドバッテリー内蔵で325g。日本で展開しているWILLCOM D4が同条件で460gだから、それに比べると100g以上も軽い。その意味ではモバイルでの活用もかなり期待できそうだ。