いっぽう直近の秀作は、昨年10月パリモーターショーのプレスデイにおいて、スパル富士重工のスタンドで振る舞われたチョコレートケーキである。例の六連星(むつらぼし)マークとロゴは、形といい色といいハンドメイドながら実物に一生懸命似せようとしたパティシェの努力がしのばれる。さすがパリ。味もイベント用にはもったいないくらいのレベルだ。スバリストの間で静かな人気の群馬「スバル最中」といい、富士重はスイーツと何やらご縁がある。
もちろんこのパリにおけるスバルケーキ、いくらよくできているからといって事前に富士重工スタッフによる完成度チェックがあったとは思えない。だがいっぽうでそこに居合わせた人(主に日本人)が譲り合ってしまったことで、六連星に手を出す人がついに現れず、やがて関係者によって粛々と下げられた。
ボクなどは喉から手が出るほど食べたかったのだが、「出る杭は打たれる」という日本古来の諺が久々に頭をよぎって断念した。
3 | 挑戦者、求む |
ということで今回はクルマとケーキについての考察をしたが、ボクとしてはぜひケーキ屋さんにはもっと難しいロゴに挑戦し、自動車イベントで人々をアッと言わせていただきたい。
筆者も「ホンダ2輪のウィングマーク」や「ポルシェ」をクリーム絞り出し器1本で、それもライブで製作できるようになるべく、にわかパティシェの腕を磨こうと考えているところである。
喰いすぎ注意 |
筆者:大矢アキオ(Akio Lorenzo OYA)---コラムニスト。国立音楽大学卒。二玄社『SUPER CG』記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わずファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』のレポーターをはじめ、ラジオ・テレビでも活躍中。主な著書に『カンティーナを巡る冒険旅行』、『幸せのイタリア料理!』(以上光人社)、『Hotするイタリア』(二玄社)、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)がある。