【ホンダ インサイト 新型】ノイズを打ち消す吸音コンセプト

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【ホンダ インサイト 新型】ノイズを打ち消す吸音コンセプト
【ホンダ インサイト 新型】ノイズを打ち消す吸音コンセプト 全 9 枚 拡大写真

ホンダの新世代エコカー第一弾となるコンパクトハイブリッドカー、新型『インサイト』。単なる低燃費モデルではなく「誰もがドライブを楽しいと感じられるクルマ」(開発責任者LPL・関康成氏)を実現するため、快適性の向上にもさまざまな工夫をこらしたという。

公道をドライブして驚くのは、エンジンノイズやロードノイズの低さだ。とりわけエンジンノイズは、タウンスピード、高速とも、巡航時はエンジンがかかっているのか止まっているのか判然としなくなるほどに低い。

新型インサイトは、時速約50kmまでの低速クルーズではモーターのみ作動するバルブ休止モードに入るのだが、エンジンをつかう80km/h前後の高速クルーズでもその静粛性が変わらないのである。それは、助手席に乗車していても、騒音の低さを感じることができる。

「新型インサイトは、NVH(騒音・振動・突き上げ)をはじめ、快適性の確保については相当に頑張りました。コスト制約は非常に厳しいものでしたが、LPLの関も良いクルマ作りには本当にこだわりを持っていましたし、安いからといって安っぽくなってはならないという思想を貫きました」

商品開発の統括役で、インサイトの担当でもあった主任研究員の大萱真吾氏は語る。大萱氏は本田技術研究所で長年、NVHにかんする研究を手がけてきた人物。インサイトNVHの低減にあたって、その長年にわたって培ってきたノウハウをふんだんに投入したという。

「静粛性を高める場合、通常は車外から伝わってくる音をどう遮断するかということを考えますが、コンパクトカーの場合、遮音材をたくさん使うとそれだけで重量が増加してしまう。そこで我々は、独自の軽量・吸音コンセプトをインサイトに適用しました。これは騒音の遮断に頼るのではなく、透過してきた音をキャビンの中で吸音させることで静粛性を向上させるというアプローチです」(大萱氏)

ホンダの説明によれば、軽量・吸音コンセプトとは、防音材に軽量で効果の高い部材を採用して軽量化を図る一方、車内の音響解析を徹底的に進め、ダッシュボード、ルーフ、フロアなどの内装材が跳ね返した音がそれぞれの音波を打ち消し合うように音響をチューニングするというもの。

ホンダはミディアムハイクラスのセダン『インスパイア』に、3気筒運転時にエンジンから発生するノイズと逆位相のノイズをスピーカーから発生させてエンジンノイズを低減させる装置を採用している。それをアクティブノイズコントロールとすれば、室内の複雑な音の反響をチューニングすることで自然とノイズを減らすインサイトのそれは、いわばパッシブノイズコントロールのようなものだ。

「インサイトの場合、そればかりでなく、例えば走行中にフロアパネルの一部がわずかに歪んだ時、車内が圧迫された分を他の部分がたわむことで逃がしてやったりといった工夫もしています。インサイトのボディ剛性はフィットと比べてもかなり向上していますが、そういうコントロールを目的として、安全に支障がない部分について、意図的に剛性を少し落としてやっている部分もあるんです」(大萱氏)

クルマを静かにするうえでエンジニアを悩ませる頑固な問題の一つに、タイヤからボディを介して伝わる、ボコボコッという耳に不快な低周波音がある。エンジニアが「ドラミング」などと呼称するこの騒音の低さは、新型インサイトを実際にテストドライブしたさいに、非常に顕著だった。

高級車のようにあらゆる物音が囁くように聞こえるといった圧倒的静粛性とは異なる、いわば不快なノイズがすべてカットされた爽やかな空間といったイメージだった。ホンダの主張する吸音コンセプト、インサイトにおいては非常に上手く機能していると言える。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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