ETC助成100万台…58億円を用意した財団の正体

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ETC車載器1台当たりの購入で、高速道路交流推進財団(村瀬興一理事長)が助成する金額は、四輪車5250円、二輪車1万5750円だ。100万台分の助成額は57億7500万円に達する。

19日の発表によると、受付期間に予定台数を超えた分も助成対象とするので、その総額はさらに膨らむおそれがある。車載器の購入助成は、過去にも高速道路会社が実施したことがあるが、これはETCを利用することよる料金収受員の削減など、高速道路の管理コストの低減を狙ってのこと。高速道路交流推進財団の助成金は、いったいどこから拠出されているのか。

「助成金は税金を使っているわけではない。財団の保有資産の還元をお願いした」(高速道路を担当する国土交通省有料道路課)

実は、同財団はなかなかのお金持ち。建物などの不動産を除いても、公益事業積立金など約374億円の資産を保有している。保有資産の還元とは、この一部をETC車載器の助成金として取り崩すことを意味する。

高速道路交流推進財団が19日に開催した理事会では「ETCの普及促進は渋滞を解消し、CO2削減に非常に有効な手段であり、公益的要素が大きいと判断した」というのだが、そのまま受け止めればかなりの慈善事業を行っていることになる。

同財団広報担当によるとこれは「高速道路のSA、PAに私どもが所有していた建物を、高速道路会社に売却したときの代金」だというが、その保有資産が作られた過程を知ると、利用者が素直に喜べるものでもないことがわかる。

同財団の前身は「道路施設協会」という。1963年の高速道路の開通以来、SA、PAのレストラン、売店の建設を一手に引き受け、そのテナント収入で協会を維持してきた。同協会の下には、さらに関連会社が連なっていたが、同協会だけで毎年700億円もの売上げがあり、高速道路利用者からの収益は余すところなく吸い上げられていたのである。

高速道路の民営化の狙いは、こうした収益事業の独占を排除することにあった。利用者からの収益を効率的に高速道路建設費の借金返済や高速道路の維持管理に向けるためだった。

つまり、民営化7年目にして、ようやくその成果がETC車載器助成という形で利用者に返ってきたというべきなのだ。

《中島みなみ》

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