【COTY09-10 選考コメント】ハイブリッドは特別なエコカーでなくなった…森野恭行

自動車 ビジネス 企業動向
大賞:トヨタ プリウス
大賞:トヨタ プリウス 全 4 枚 拡大写真

「ハイブリッドの価格破壊」で仕掛けた“挑戦者『インサイト』”に、“元祖『プリウス』”が真正面から応じるというドラマチックな展開で、日本人の目を釘付けにしたP・I戦争。ハイブリッドカーが「特別なエコカー」から、「フツーの人が、フツーに選択できるクルマ」へと大化けをした、大きな転換点ともいえる年になったのが09年です。今回のカー・オブ・ザ・イヤーの結果はまさしく、そんな記念すべき年を象徴するものになりました。

ボク自身も、この2車の採点には「うーん」と悩み続けました。結局、1位プリウス、2位インサイトとしましたが、その理由は「価格破壊」の功績や「軽量設計や5ナンバーサイズの扱いやすさにこだわるパッケージ」よりも、「実用を含む燃費性能(環境性能)」、「コストバリューに大きな影響を及ぼす安全装備の充実度」、「所有する喜びにもつながる内外装の質感」という、クルマとしてのよりわかりやすい価値や魅力に重きを置いたからです。

そこに、3代を重ねてきた“元祖プリウス”の強さや、企業としてのトヨタとホンダの基礎体力の違いを見ることができます。インサイトの“189万円”はじつに衝撃的でしたが、プリウスの“205万円”にも「そこまでやるか!」的な大きな驚きがありました。

しかしながら、新聞やテレビの報道を見ますと、昨今はハイブリッドとEVに話題が偏りすぎな気がします。1位がプリウス、僅差の2位がインサイトとなり、そしてテクノロジー賞に『i-MiEV』が輝いた今回のカー・オブ・ザ・イヤーの結果が、たぶん“それ”を加速させることでしょう。まあ、時代の大きな変化が、今まさに、クルマ界に来ているということなのでしょうが……。日本市場の動きは急すぎる印象があります。

いろいろな技術、さまざまなジャンルがあって、形成されているのがクルマの便利さ、楽しさ、おもしろさです。ハイブリッドやEVは、もちろん大いにけっこう!でも、クルマの魅力は“それ”だけではない。視野を広く持って、クルマ好きの皆さんにはこれからも、クルマのマルチな楽しさや、自分や家族の価値観やライフスタイルにあった便利さや心地よさを追い求めていってほしいですね。

森野恭行|カーレポーター
自動車専門誌のアルバイト、編集プロダクションの社員を経て、84年からフリーのカーレポーターとして活動をしております。生来のクルマ好き……昔なら「カーキチ」と呼ばれる人種で、機会があればどんなクルマでもとことん試乗をしてきました。今の時代、自動車に対する逆風も吹いていますが、「クルマは人の生活を豊かにするモノ」、「クルマの運転は楽しい!」が私のモットー。出会ったクルマの個性や魅力、そして開発者が担当モデルにこめた情熱などを、新車紹介や試乗インプレッションなどを通して読者の皆さんにわかりやすくお伝えすることを心がけています。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。1963年生まれ。

《森野恭行》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 待望の新型スズキ『GSX-R1000R』が予告なしの初公開!「3色3様」往年のレーシングカラーで日本市場復活へ
  2. 「ミニGSX-R」をスズキがサプライズ発表!? 鈴鹿8耐マシン以上に「サステナブルかもしれない」理由とは
  3. リトラと決別した「ワイルド・キャット」、3代目ホンダ『プレリュード』【懐かしのカーカタログ】
  4. 世界初の「破壊不可能ホイール」って何だ!? テスラ向けパーツ手掛ける米メーカーが開発
  5. 21車種・64万台超、トヨタ自動車の大規模リコールに注目集まる…7月掲載のリコール記事ランキング
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  3. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. ブレンボが新ブレーキ開発、粒子状物質を削減…寿命も最大2倍に
ランキングをもっと見る