「走る・曲がる・止まる」の限界を体験
SUPER GTカーやフォーミュラーカーが激走し、名勝負や名選手を数多く輩出し続ける富士スピードウェイ(FSW)。そのなかに併設されるのがトヨタの交通安全センター「モビリタ」だ。「走る・曲がる・止まる」の限界を安全に体験できる施設で、国内最大級を誇る約10万平方メートルのフラットコースをはじめ、35度バンクや低ミュー路など、運転のスキルアップを短時間でできるよう工夫を凝らしている。
安全と運転を知り尽くしたテストドライバーの教官がインストラクターとなって、安全に、そして丁寧に指導する。その内容は日頃体験できないことばかり。一般・個人と企業・団体を対象にしたメニューは豊富で、年間を通じて開催している。
◆トヨタのノウハウを安全運転に応用
講習車はトヨタ『マークX』(250G Lパッケージ)。死角の確認、運転姿勢の確認、高速フルブレーキング、低ミュー路走行など、運転の基本に加えて、ABSやVSC(横滑り防止装置)の効果が体験できる。興味深いのは、まず35度バンクだ。一通り走った後、バンクの途中にクルマを停め、カーブで遠心力が働いている状態を再現し、コーナリング中の運転姿勢や横転時のドアの重さを確認するのである。
アイスバーンなどを想定した低ミュー路の走行も、面白いというか、貴重な体験だ。最初はVSCなしで走る。案の定ツルツル滑って「ワケわかんない」状態に陥るうえに突然、噴水が出てきて、回避しなくてはならない。完全攻略するのはまず無理。これが公道だと思うとゾッとする。ところがVSCありで走ると、アラ不思議。ほとんど滑らなくなるので、安心して走らせることができ、しかも途中に出てくる噴水だって何事もなかったように回避できる。運転がうまくなった!? そんな錯覚すら起こる。
運転の基礎は教習所で習ったきり、という人は多いが、これが落とし穴だったりする。たとえばABSを効果的に作動させるためには、できるだけ強くブレーキペダルを踏み続けることが重要だが、いざ実践しようとすると、頭で分かってはいても、なかなかできない。特にABSがなかった時代に免許を取得した人からすれば、その行為はむしろ危険なことだと思ってしまう。モビリタでのトレーニングは、そうした認識を見直すきっかけにもなる。
◆地域貢献活動の一貫として幼児向けも
料金は個人向け半日コースが8400円、1日コース(昼食付き)が1万3650円など。その他に企業向けのプランなども用意する。また、日本トップクラスのレーシングドライバーが教えてくれる特別プログラムもある。モビリタの土屋喜則チーフマネージャーは「初心者からベテランまで幅広いドライバーを対象にしておりますので、普通自動車免許をお持ちの方であれば、どなたでも受講いただけます。企業や団体向けには、ご要望に応じてトレーニングメニューを組み立てることもできます」と話す。
有料プログラムのほか、地域貢献活動として幼児向けの交通安全教室も行っている。静岡県駿東郡小山町の後援のもと、町内全ての幼稚園・保育所の年長園児と保護者を無料で招待するもの。交通安全ルールをわかりやすく伝えるとともに、屋外学習として、実車を走らせるなど実際の交通環境を再現し、横断歩道の渡り方、信号の意味、飛び出しの危険性を教える。また、保護者向けに、幼児の行動特性や事故実態、チャイルドシートの装着方法、家庭での交通安全教育の重要性などを説明する。