3 | いまだ「ボタン式」も多数 |
しかし、21世紀ヨーロッパに今日も存在していて驚くのは、ずばり「ボタン式」である。手を感知するセンサーはなく、使用者みずからがボタンを押してスイッチオンする。日本では「0」系新幹線の洗面台に「エアータオル」の名で設置されていた時代から、ハンドドライヤーといえば勝手に作動するものと思っているが、欧州ではそうはいかなない。
その第一の例は写真6だ。イタリアの高速道路「アウトストラーダ」のサービスエリアで圧倒的シェアを誇るハンドドライヤー『マグナム』である。製造しているのはミラノ郊外に本社を置くフマガッリ・コンポネンティという会社だ。1962年創立以来、ハンドドライヤー(ほぼ)ひと筋。電機業界で生産拠点の国外移転が進む中、今日でもメイド・イン・イタリーを売りものにしている。
吹き出し口横に付いた、巨大なクロームのボタンを押して作動させる。最初は「人が触ったあとのボタンって、なんかイヤだなあ」と思っていたが、やがて肘で押すという作法が無言のうちに存在することを、他の人を見て習得した。
ちなみにフマガッリ社の名誉のためにいえば、同社はセンサー式のハンドドライヤーも製作している。しかし製品ライナップを見ると、ボタン式ハンドドライヤーのほうがいまだ多く、そのカラーやマテリアルのバリエーションは年々増えている。
メインテナンスを日本のように頻繁に行なうことが難しく、また公共の場所で人々の使い方が荒いこの地で、見るからに丈夫なボディをもち、センサー故障の心配もないボタン式は、充分に存在価値がある。 日本の尺度で、機能の優劣だけでモノを判断してはいけない。