ホンダが25日に発表した『エネポ』は、カセットコンロ用のガスボンベを2本使う、ガスパワー発電機だ。ホームセンターなどで簡単に入手できる標準的なボンベで、900VAの電力供給能力を持つ。ガソリン式の発電機と違った操作性・保守性の良さから、その用途の広がりは大きそうだ。
ホンダが主催した取材会では、実際に発電機を動作させたデモも行われた。ボンベの装着、始動など取り回しや操作の体験ができるようになっていた。
ボンベの装着は、原理や操作はカセットコンロとほぼ同じだ。本体上部のカバーを持ちあげ、内部の装着レバーを「開放」にしておく。この状態でボンベを2本差し込むのだが、カセットコンロとの違いは、ボンベにある「切り欠き」の位置だ。カセットコンロでは、ノズルの付け根にある「切り欠き」を上にして装着するが、エネポでは下向きにセットする。正しくセットできれば、装着レバーを固定方向にスライドさせることができる。
なぜ、下向きにするかというと、通常のカセットコンロはボンベの中のガスを気体の状態で取り出している。そのため、中のノズルが上方向になるようにセットする必要があり、「切り欠き」で上下方向がわかるようになっている。しかし、気体取り出しでは、ボンベの中は気化熱が奪われ温度が低下するので、気化を維持するためバーナーの熱をヒートパネルに誘導してボンベを加熱しておく必要があるのだ。
エネポは、ガスを液体取り出しとしているため、逆方向の下向きにセットする。
エンジン始動もいたって簡単だった。ボンベが装着できたら、エンジンスイッチを「停止」から「運転」にして、リコイルを引っぱるだけだった。勢いは必要だが力はそれほどいらない。女性でも余裕で始動できる。エンジン停止は、スイッチを「停止」にするだけだが、横転や異常検知などでも自動停止するようになっている。
騒音は、84dBというと、交差点や国道くらいのレベルとなるだろうか。昼間の屋外ならそれほどうるさいというほどでもない。また、エコスロットルモードというものがあり、負荷がかかっていない場合はもう少し静かになる。
定格出力は100Vで900VA。一般的な家電ならばほぼ900Wと思えばよいだろう。1000Wのドライヤーは使えないが、オーブントースター、炊飯器は問題ない。ホットプレートや電気ケトルもぎりぎりセーフだ。また、オルターネータにはインバータが搭載されており、コンピュータにより出力制御が行われるため、100Vの交流電圧と波形は家庭内の100Vコンセント並みに安定している。したがって、パソコンなどの精密機器の接続も可能となっている。
1000W以上の機器を利用したい場合、エネポを2台並列につなげて定格出力を1800VAまでアップさせることもできる。この場合は、別売りの専用ケーブルで2台のエネポを接続させる。これによって、2台の交流電源は位相や振幅、周期などが同期するようになるので、ひとつの電源として定格まで使うことができる。ACのアウトレットはどちらのエネポのものを使ってもよい。
なお、燃料はカセットボンベだが、エンジンによって燃焼させているので、排気ガスは避けられない。屋内やガレージ内など排気ガスがたまりやすい場所での使用はできない。排気ガスはガソリンエンジンとほぼ同じだが、一酸化炭素は自然燃焼のカセットコンロより多くなるので、必ず屋外での使用となる。