【池原照雄の単眼複眼】非常識な混流生産に挑むトヨタ

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画像は田原工場のレクサス生産ライン
画像は田原工場のレクサス生産ライン 全 3 枚 拡大写真

「モノコック」と「フレーム」を同一ラインに

トヨタ自動車がグローバル生産体制の再構築を進める。中国、インドといった新興諸国で能力増を図る一方、余剰となっている日本はライン統合などにより適正化を急ぐ。

ライン統合では田原工場(愛知県田原市)を舞台に、「モノコック」と「フレーム」による異なる車体構造のクルマを同一ラインで流すという、恐らく世界でも前例のない混流方式に挑戦する。

今回の世界規模での生産体制見直しは、日米欧の先進諸国の市場成熟化と新興諸国の急成長を背景に「グローバルで最適な供給体制を構築して持続的な成長につなげる」(生産担当の新美篤志副社長)狙いだ。

中国やインドでの生産能力を拡充する一方、最大の収益地である北米では開発から生産準備、生産に至るまでのオペレーションを現地企業に委ね、「自立化」を推進するという。北米では需要の変化に対応、ハイブリッド車やコンパクトカーを重視した生産体制への見直しも図る。

◆日本はマザー機能を再強化

再構築を進めるうえで、もっとも多くの課題を抱えるのが最大の生産能力をもつ日本だ。世界のマザー拠点として開発、生産支援、海外市場向け車両(輸出車)の生産を担っており、需要の変動による波をまともに受けやすい。勢い、生産量は大きく振れて、余剰能力も生じやすい。

北米を中心とした海外市場が収縮した現状は、まさにそうした影響を受けている。トヨタ単体の国内生産はピークの2007年度に426万台だったが、09年度は320万台と100万台余りも落ち込んでいる。

トヨタは日本の生産再構築に当たり、2つの処方箋を描いた。第1に、国内生産のモデルは「新技術」「新コンセプト」「新工法」に関係した車両を中心とすること。環境車など新しい技術を織り込んだクルマの生産や、新しい生産システムの導入など、マザー機能を従来に増して強めていくというものだ。

◆成功すれば北米で威力発揮

もうひとつは、柔軟性と効率の追求。高度な混流生産により需要変動にフレキシブルに対応する一方で、プラットフォーム(車台)ごとに集中生産して効率を高める取り組みも進める。

混流生産では、セダンやミニバンなどモノコック構造と、SUVなどフレーム構造の車種を同じラインに流すという、効率面からは一見非常識な生産システムの構築にもチャレンジする。3ラインで年60万台と、国内最大級の田原工場で11年末までに完成させる方針だ。

計画では『ランドクルーザー』や『ランドクルーザープラド』などフレーム系の第1ラインと『ウィッシュ』や『RAV4』などモノコック系の第2ラインを統合する。統合後の能力は未定だが、いわゆる「寄せ停め」による余剰能力の是正も図る。

混流に当たってはラインの構造や、組み付け部品の供給方式など革新的な技術・手法が求められる。成功すれば、波及効果は大きい。

とくにフレーム構造によるライトトラック系の車種が多い北米工場のフレキシブル生産に威力を発揮することになるだろう。田原での“実験”は、将来にわたって国内工場がマザー機能を担うことができるか否かの試金石にもなる。

《池原照雄》

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