イタリアのバス事業者の団体「フェデルモビリタ」は12日、ローマで行なわれた会議で、無賃乗車の実態を明らかにした。
それによると、イタリアの路線バスにおける無賃乗車率は5.7%で、乗客20人に1人強の割合。欧州平均(4.2%)を上回っている。近年の経済危機の影響から無賃乗車は増加傾向にあり、バス事業者が被る年間損失額は、4億5000万ユーロ(約508億円)に達している。
無賃乗車する乗客の年齢層は30歳以下が多く、身分は学生が目立つ。地域的にはイタリア南部での無賃乗車が多い。また、以前は外国人が目立ったのに対し、昨2009年は年金生活者や失業者による無賃乗車が増えていることがわかった。
会議では、国際公共機関連盟が調査した世界の無賃乗車率も発表された。それによると、フランスにおける無賃乗車率もイタリアと同じ5.7%。逆に最も少ないのは、香港、マドリッド、コペンハーゲン、ポルト(ポルトガル)、コペンハーゲンの2.7%だった。
イタリアの路線バスでは、あらかじめ乗客がタバコ店や雑誌スタンドなどで乗車券を購入し、バス車内に設置された時刻印字機に差し込むのが一般的だ。乗車券1枚の有効時間は、バス事業者によって60〜70分とまちまちである。
バスには複数の乗降口があることもあり、基本的に運転士は乗客が正確に印字したかを確認することはない。検査を行なうのはときおり乗り込んで来る専門の従業員だ。乗客が無賃乗車をしていた場合、事業者によって乗車券金額の数十〜数百倍の反則金を課す。反則金は後日金融機関を通じて振り込ませる。
しかし検査は抜き打ち方式であり、その頻度はけっして高くないことが、無賃乗車が横行する温床となっている。
日本のように運賃収受機を設置すればよいのだが、現金を載せて走ることは保安上問題がある。検査員を増員すると、今度は人員コストがかかってしまう。すでに多くの街で電子マネーによる精算制度も導入されているが、前述のように乗降口が複数あるため、運転士による完全なチェックは不可能だ。そういって、乗車口もしくは降車口を1か所にするのは、短時間に大量の乗客を乗り降りさせるうえで好ましくない。無賃乗車対策は、イタリアのバス事業者にとって、かなりの難題なのである。
これからイタリア旅行をする人のために記すと、印字機が故障している場合もたびたびある。そのときは、乗客自らが手書きで乗車日時・時刻を記せば有効とするバス事業者が多い。