【池原照雄の単眼複眼】ホンダ、国内生産能力130万台を死守

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伊藤孝紳社長と近藤広一副社長
伊藤孝紳社長と近藤広一副社長 全 4 枚 拡大写真

国内空洞化は是が非でも阻止する

ホンダは20日、伊東孝紳社長と近藤広一副社長が記者会見し、環境対応車の投入計画や新たな国内生産体制などについて発表した。このうち、年130万台の能力を抱えて余剰状態にある国内生産の扱いに注目していたが、「中長期的に130万台でやる」(近藤副社長)方針を明示した。

自動車各社の国内生産は昨年春の大底から回復しているものの、金融危機以前の8割レベルにしか戻っていない。国内設備廃棄の誘惑に駆られるところだが、一定水準の能力を確保しないと新鋭の生産技術は生み出しにくいし、海外需要が回復した時に商機を逸することになる。伊藤社長は、能力減による「国内空洞化は是が非でも阻止したい」と、強調した。

ホンダは、金融危機後に凍結していた国内の新工場の扱いについても20日公表した。埼玉県の寄居工場(同県寄居町)は、2013年にハイブリッド車(HV)など環境対応車の生産を少量で立ち上げる。一方で子会社の八千代工業が計画していた軽自動車の新工場(三重県四日市市)は建設中止を決めた。

◆「70万~80万台」に引き下げとの誤報

軽自動車は八千代の既存工場(同市)で生産するとともに、12年からはホンダの鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)でも生産することとした。鈴鹿ではエンジンなどパワートレインを刷新し、大幅な車体軽量化を図った低燃費・低コストの次世代モデルの生産技術を確立する狙いだ。

八千代の新工場は、もととも能力増よりも新鋭設備による生産の革新に重点を置いていた。その新工場でやろうとしていたことを鈴鹿で行い、次のステップとして八千代の工場にも展開することになる。

寄居工場の生産準備再開などは、日経新聞が7月15日付朝刊でいち早く報じた。だが、この記事にはホンダが「将来は国内の生産能力を年70万~80万台程度に引き下げる方針を打ち出している」との事実誤認部分も紛れ込んでいた。

このレベルだと前期(10年3月期)の国内販売約65万台を除けば輸出に振り向けられるのはわずか5万~15万台でしかなくなる。あり得ない水準だ。ホンダは海外工場を展開する際、そのマーケットへの供給比率は現地工場が8、日本からが2の割合になるよう生産能力を設定してきた。

◆世界販売450万台体制への「構え」

海外市場に異変が起きた場合、相対的に体質の弱い現地工場の操業率はできるだけ落とさず、その分を体質の強い日本でかぶるようにするためだ。金融危機はまさに異変であったが、同社の連結業績が赤字に陥らなかったのは、そうしたオペレーションが効いたからでもある。

20日の会見で近藤副社長は、能力130万台のうち大枠で70万台を国内向け、60万台を輸出向け(うち北米が40万台)と想定していると指摘した。これは06年に中期展望として打ち出した世界販売450万台(前期は339万台)を実現するための国内生産部門の「構え」だという。

ホンダの今期の国内生産は100万台強の計画であり、能力とのギャップはなお大きい。しかし、だからといって国内生産の「構え」を崩せば、持続的な成長の道筋を自ら放棄することになる。ホンダの海外生産はすでにピーク時レベルまで戻っている。北米を中心とする輸出市場の回復まで、国内生産はもう少し「忍」の時が必要だ。

《池原照雄》

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