EVREVOでハイブリッドカーの評価システムを“変革”する…明電舎 動計・搬送システム事業部長 山本功一氏

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執行役員 動計・搬送システム事業部長 山本功一 氏
執行役員 動計・搬送システム事業部長 山本功一 氏 全 3 枚 拡大写真

明電舎が1月に発表したEV・HEV(PHV)用評価システム『EVREVO(イーブイレボ)』。来るPHV/EV時代に向けた評価・開発ツールとして、この業界でいち早くEV対応した形だ。リリースから半年あまり経ち、すでに数件の受注を得ているとのことで出だしは上々という。EVREVO開発の狙いについて、明電舎 執行役員 動計・搬送システム事業部長の山本功一氏に話を聞いた。

----:2010年の初頭に、EV・HEV用評価システム「EVREVO(イーブイレボ)」をリリースされました。他社に先駆けてEVやHEVの評価システムラインナップをいち早く揃えた印象ですが。

山本:当社としては、従来のレシプロエンジンの開発ツールの提供していくことはもちろん、EV/HEVといった次世代のパワートレーンを評価するシステムもきちんと製品群に入れて提供していくというのが基本方針です。EV/HEVに特定した試験設備は市場的にまだ規模は大きくありませんが、必ずこれから伸びていく分野。先行してこの分野に取り組んでいくことで、このEV/HEV分野の評価システムのシェアを積極的にとっていきたいと考えています。

当社は従来よりレシプロやディーゼル(エンジン)の評価システムを提供していますが、自動車向けの評価システムは、大きく分けて駆動部分を担う機械装置とコントロールをおこなう制御装置(操作・制御板)からなります。評価システムは様々なメーカーが出されていますが、この両方を自社内で開発・製造をおこなっているところは数少ないのです。

ただ今回のEVREVOについては、小野測器と業務提携して共同開発しています。大きく言うと、機械装置は当社独自での開発、操作計測の部分、例えばECUの適合だとか細かい計測技術については小野測器のご協力をいただきました。

----:EVREVOの特徴として、「顧客の開発プロセスに応じて、リアル(実物)とモデル(仮想)の両面での評価が可能になったことでEV/HEV開発にかかる開発期間を短縮できる」とのことですが。

山本:EVの場合は、モーター出力だけの計測なのでそれほど評価は難しくないのですが、それでもエンジンの代わりにモーターになって測定方法が変わるだけでなく、バッテリーの搭載位置によって冷却装置の配置を変えるなど工夫が必要です。PHV/HVの評価は、エンジン出力とモーター出力とのバランスを測らなければ本当のエネルギー消費量が分かりません。

----:リアル(実機)をすべて揃えたシミュレーションではなく、一部をモデル(仮想)化することで、評価に必要なコストや時間を節約できると言うことでしょうか。

山本:ええ。ですが、1つのシステムで全てのニーズに応えることは難しいため、EVREVOではお客様のニーズと用途に応じて3つのシステムを展開しています。

まずエンジンとそこから出てきた力、ブレーキ回生時の発電機、モーター駆動のためのモーターを機械的につないで、おのおのの出力を計測する「パワーバランス評価システム」。エンジンやモーター、発電機やインバーターをそれぞれ個別に用意していただければ、動力分割機構とバッテリーをモデル化して、お互いの信号を演算計測処理します。エンジンとモーターのそれぞれの分担だとバランスがここで読めます。

次に「モーター評価システム」。これは純粋にEV用のモーターを計測できるものです。モーターと機械装置をつないでモーターの出力を計測します。ここではHEVエンジンとEV車両、バッテリーをモデル化します

そして3つめが「駆動系評価システム」です。こちらはモーターをリアルにして、ドライブトレインの走行シミュレーションをおこなうものです。この3つを組み合わせることで、HEVやEVの走行シミュレーション・評価が一通り可能です。

----:モデル化はなぜ必要なのでしょうか。

山本:ご存じのようなシャシーダイナモに、完成車を載せて走行シミュレーションをするのがいわゆるリアル評価というものです。従来の内燃機関エンジンでは、これでガソリンの消費量や排気ガス、音振動を計測します。ですが、HEVやEVではバッテリーと実際の挙動との相関や、連続してアクセサリーをON/OFFした場合の変動だとか、評価の方法が若干変わってくるのです。

さらに複雑な機構を持つHEVでは、エンジンとモーターの開発が別々になっていることも少なくありません。モーターならモーター、駆動なら駆動と、一部のシステムについては実機を用意し、それ以外の部分についてはモデル化対応することで、評価機を調達する費用と工数を抑えることができるのです。

----:EVREVOリリースから半年が経過しました。提案先の反応はいかがでしょうか。

山本:具体的な数は申し上げられませんが、EVやHEV開発に携わっているメーカーを中心に、数社からすでに受注をいただいています。海外メーカーを含めていろんな会社様に興味は持っていただいます。

当社は三菱自動車の『i-MiEV』のモーターを作っていますが、われわれのようなモーターの開発メーカーについては、1万6000回転や2万回転の機械装置を提供させていただいたり、一方でパワートレーンの評価を行いたいというところでは高容量タイプの装置をおすすめするなどしています。あるいはモーターメーカーでもHEVのシステムを全体的に取り組みたいというケースでは動作計測装置もご提供したいと考えている。いずれにせよ、EVREVOでは様々なニーズにお応えできるラインナップを揃えています。

----:御社の戦略として、EVソリューション/次世代環境車開発支援ツールはどのような位置づけとされていますか。

山本:この分野は、将来においては重要な位置を占めるであろう事業の柱になることは間違いありません。

EV/HEVでは電流や電圧や回転数といった、個々のデータ計測は可能なのですが、どういう評価づけをしていくかは、まだ具体的な手法が確立されていません。当社は、開発メーカー様とともに、評価のノウハウを積んでいくということもEVREVOの狙いでもあります。精度の高い評価を実現していくためにはノウハウの蓄積が必要です。機械の上で走らせたものと実際の走行との差を小さくさせるか。実走の道路にいかに合わせるかで、われわれの評価が決まってくるのです。

----:EVREVOの製品名は小野測器と明電舎、どちらが発案されたのですか。

山本:われわれが決めました。“Revolution”(革命)というのはちょっと大げさかなと思いましたが、メーカー様に対して少しでもEV開発に変革をもたらす役に立てれば、という意味で付けました。

このEVREVOの商品化により、まずは1つのステップを踏み出すことができました。今後はこれをベースにしながら、バージョンアップしていく考えです。当社は自動車開発会社の動向をみながら、ニーズにあった設備をご提案するのが使命。繰り返しますが、世の中がハイブリッドやEVは主流になっていくことは間違いありません。この分野の試験設備は事業の柱のひとつとして取り組んで行きます。

《聞き手 藤原央行/北島友和》

《まとめ・構成 北島友和》

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