ハイブリッドを自己表現しないフィット、対照的な プリウス…千葉匠

自動車 ニューモデル 新型車
フィットHV と プリウス
フィットHV と プリウス 全 12 枚 拡大写真

ホンダ『フィットHV』にとって、最大の売りは「フィットである」ということだ。

【画像全12枚】

このクラスのベストセラーとして確固たるブランドイメージを持つフィットだから、今回のマイナーチェンジもデザイン面を大きく変えることはなく、空力を中心にリファイン。追加モデルのハイブリッドはグリルやランプ類、内装色などで差別化するにとどめた。「ハイブリッドありき」のマイチェンとはいえ、フィットらしさの方向を変えたわけではない。

ただフィットHVにとって悩ましいのは、オーナーが「ハイブリッドに乗ってます」と自己表現しにくいことだろう。トヨタ『プリウス』は言うまでもなく、誰が見てもハイブリッドとわかる専用車。同じ専用車の『インサイト』と比べても、インテリアを含めてハイブリッドならではの特別感が強い。自己表現でき、それゆえ自己満足も高いのがプリウスの強みだ。

しかもプリウスは、空いた道であれば苦もなく30km/リットル以上の燃費を記録できる。フィットHVを試乗会でチョイ乗りしたところ18.4km/リットル。インサイトなどに乗った経験から言っても、ホンダのIMAシステムで20km/リットルを大きく超えるのは難しく、プリウスに比べると燃費の感動は小さい。さらに、上り坂でアイドルストップした後の再始動で後ずさりすること、停止前に約10km/hで回生ブレーキが切れた瞬間に減速度が変化することも、プリウスでは経験しないIMAの難点だ。

IMAはシンプルなシステムだけに妥協もあるが、そのかわり軽量コンパクトで低コスト。それがプリウスの牙城を崩す武器になるのは、人々が「ハイブリッドならではの特別感」を求めなくなるときだ。そんな時代を手繰り寄せるべく、まさにIMAの本命としてフィットHVが登場した。これを虚心坦懐に「フィットの低燃費バージョン」と思えば、仕様・装備を勘案した実質的な価格アップ分は20万円ほどだから、走行距離の多い人なら充分に元が取れる。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは審査委員長を務めた。

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