●プラグインハイブリッドと直列ハイブリッドの併用へ発展
しかし、フーガ・ハイブリッドに弱点はないのだろうか。
展示されていたパワートレインには補機類が装着されていなかったが、セルモーターや発電機の機能は駆動用モーターで賄っていると言う。
ということは、ハイブリッドといってもリチウムイオンバッテリーが完全放電してしまった状態ではエンジンの始動もできないから、走行不能に陥ることになる。だが、バッテリーの容量には十分な余力があるため、1年くらい乗らずに放置でもしなければ、始動不能になるようなことはないそうだ。
またエンジンとモーターの駆動は切り離せても、エンジンで走行している時にはモーターを介してトランスミッションへと駆動力を伝える必要がある。ということは高速巡航時にバッテリーが満充電になっている状態では、モーターは単に抵抗となってしまいそうだ。
早崎氏によれば、そういった状況も有り得るが、実際にはかなりの範囲までモーターによる走行でカバーできると言う。能力的には140km/hでもモーターによる走行は可能だというが、実際には80km/hを上限に設定されているそうだ。
パワフルなモーターと回生機構のおかげで、サンフランシスコなど坂の多い市街地でも50〜60%もエンジン停止状態を実現できていると言う。10・15モードで従来車の倍近い省燃費を実現しているだけでなく、実燃費でもこれまでの高級車とは比べ物にならない好燃費を出してくれそうである。
それにトランスミッション後端にある2つ目のクラッチをコントロールすることにより、停止中にエンジンをアイドリングさせてバッテリーを充電することもできるという。バッテリーの容量さえ増大させればプラグインハイブリッド、シリーズ式ハイブリッドを併用できる発展性があるシステムとも言えるだろう。
ただし、小型車などパワートレインを横置きにするレイアウトには、スペースの問題で難しそうだ。低速トルクに優れたモーターを、実は駆動損失の大きいCVTと組み合わせるのは現実的ではないから、小型車はEV、大型高級車は2クラッチFRのハイブリッドとする日産のラインナップ戦略は理解できる。すでにハイブリッド関連で特許をガッチリと握っているトヨタへの日産の対抗策が、この2本柱なのだ。
筆者:高根英幸(たかね・ひでゆき)---芝浦工大卒。自動車販売会社、輸入車専門誌の編集者を経てフリーランスに。メカニズムへの探求心とドライビングの楽しさを追求する、独自の視点をもつ自動車ジャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。