【プリウス ミニバン プロトタイプ発表】リチウムイオン電池の採用に踏み切った理由
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バッテリーパックは54個の角型リチウムイオン電池セルを直列接続したもので、電圧はニッケル水素電池パックと同じ201.6V(ボルト)、容量は2割ほど少ない5Ah(アンペア時)となっている。リチウムイオン電池モジュールはプライムアースEVエナジー製だが、セルは一部で噂されていた三洋電機製ではなく、パナソニック製だ。
プラス極材料にパナソニックの得意技術であるニッケル酸リチウムが使われている。そのことから類推されるように、「基本的に現在リース運用が開始されているプラグインハイブリッドカー『プリウスPHV』に採用したもの。特性も含めてほぼ同一仕様」(HV電池ユニット開発部・石下晃生氏)である。
EVやプラグインハイブリッドカーなどの電動車への採用が徐々に拡大しているリチウムイオン電池だが、値段の安い量販モデルへの搭載はかなりの冒険である。マスメディアではリチウムイオン電池のコストダウンが順調であるかのように喧伝されているが、重量あたりの単価はクルマづくりの常識からはおよそ考えられないほどに高価というのが実情。エンジニアの間では、「1割コスト低下? 何だ、値段が1割になったんじゃないのか」などという話が、ちょっとオーバーなジョークとして通用するほどだ。
「実際、リチウムイオン電池は高い。しかし、使わなければ進歩はないという葛藤は、社内でも常にあります。その問題は今でも解決されたわけではないんですが、『(パッケージング面で厳しい)ハイブリッドカーで、コンパクトなボディと7名乗車のスペースを両立させたい、そのためにもリチウムイオン電池を』と声高に叫んでいた人物がいまして。まさにこのクルマがあったから、リチウムイオン電池採用に踏み切ることができたんですよ」(石下氏)
新型ハイブリッドミニバンの7人乗りモデルは、決して無理やり3列目シートをつけただけのクルマではない。フル乗車状態では室内はゆとりたっぷりというわけではないが、2列目シートのパセンジャーが少し譲り合いの精神を持てば無理なく7人乗ることができ、ロングドライブ以外では十分実用に耐えるパッケージングを持っている。リチウムイオン電池採用の見返りは十分にあったと言える。