トヨタ自動車が4月下旬に発売する『プリウス』のミニバン。注目は7人乗り3列シート車にリチウムイオン電池を搭載する点だ。5人乗り2列シート車はニッケル水素電池を採用する。リチウムイオン電池は高性能というイメージが強いが、パワー、発進加速性能、モード燃費性能など、「各種スペックについては5名乗車版と7名乗車版の間に差が出ないような設計となっている」というのがトヨタの公式見解だ。
電圧はどちらも201.6V(ボルト)だが、容量はニッケル水素電池パックが6.5Ah(アンペア時)、リチウムイオンが5.0Ahと、2割ほどリチウムイオン電池のほうが小さい。セルの性能そのものはリチウムイオン電池が優れいているが、容量はニッケル水素が大きい。その他、充放電制御など多くのパラメーターを細かくチューニングすることによって、性能差を作らないようにしているのだという。実際に両モデルを試乗しても、バッテリーの種類による走行フィールの違いはまったく体感できなかった。
が、両バージョンの間で相違点がまったくないかというと、そうとも言い切れない。公称燃費は同一だが、モード燃費は一定の気温のもと、決まった走行パターンのみで計測される。その条件から著しく外れた走行環境では、両電池の性能差が出る可能性があるという。
「リチウムイオン電池は内部抵抗が小さく、充放電が素早いという性質があります。運転の仕方によってはリチウムイオン電池のほうがエネルギーをたくさん回収できる可能性があります」(HV電池ユニット開発部・石下晃生氏)
また、リチウムイオン電池はニッケル水素に比べて、高温時の性能低下が少ないという特質もある。現在のハイブリッドカーの大半はニッケル水素電池を搭載しているが、夏期の日中など温度が高いときには電池の性能が落ち、エネルギー回収量が著しく減少するという状況が頻繁に発生する。
「リチウムイオン電池の場合、気温がかなり高い場合でも回生で得られた電力を蓄えることができる。その部分も違いが出る可能性があるところです」(石下氏)
もちろんこれらのことだけをもって、リチウムイオンモデルのほうが絶対的に優れているとは言えない。通常走行では性能差はほとんどないうえ、充電容量自体はニッケル水素電池パックのほうが大きく、速度の高い状態からの減速や長い下り坂などでは絶対的なエネルギー回収量で勝る。電池の違いより、用途の違いで5名乗車版、7名乗車版のどちらにするかを決めるのが賢明なようだ。