大矢アキオの『ヴェローチェ!』…盗難車ランキングに懐かしのモデル

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パンダ初代(手前)&現行
パンダ初代(手前)&現行 全 7 枚 拡大写真
 ウーノやY10の人気、なぜ?

イタリアで最も盗まれやすいクルマは?---自動車セキュリティサービス会社「ロージャック・イタリア」はこのほど、内務省の資料をもとに車両盗難に関する最新データを発表した。

イタリアでは2010年に、乗用車12万4197台、2輪車3万8783台、大型車両2908台が盗難被害に遭った。乗用車に関していえば前年比5ポイント減だが、それでも1日340台以上、1時間に14台、4分に1台がなくなっている計算だ。発見された車両は、47%にあたる5万8799台に過ぎない。

年間車両盗難発生件数が最も多かったのは2万0401台のローマで、以下ナポリ、ミラノ、バリ、カターニャ、トリノと続く。逆に、盗難発生件数が少なかったのは、ベッルーノ(18台)、ソンドリオ(30台)、アオスタ(32台)と、いずれも北部県が占めた。

最も盗まれる台数が多かった車種は、
1位:フィアット・パンダ 9246台
2位:フィアット・プント 8870台
3位:フィアット・ウーノ 7245台
4位:フィアット・チンクエチェント 5429台
5位:ランチア・イプシロン 4250台
で、以下は
6位:フォード・フィエスタ 
7位:VWゴルフ
8位:アルファロメオ147
9位:アウトビアンキY10
10位:オペル・コルサ
だった。

トップ5をフィアット・グループ車が占めることに関して調査報告では、ポピュラーなモデルであることから、そのまま転売する際も、解体後パーツとして売る際に稼ぎやすいためと分析している。

データでは、盗まれる各モデルが具体的にどの年式かまでは触れていない。だが、3位のフィアット『ウーノ』は、すでに生産完了から16年、9位のアウトビアンキ『Y10』は15年が経過している。にもかかわらず、いまだ車両盗難犯たちの“人気車”なのは、イモビライザーが装備されていないなど、今日のモデルよりガードが甘いことがあるだろう。

同時に、中古車市場をみると、もうひとつの理由がわかってくる。人口1000人あたり乗用車保有率が601台と欧州ナンバーワンであるイタリアでは、セカンドカー、サードカーとして中古シティカー需要が高い。たとえファーストカーにドイツ製高級SUVを所有しているような家庭でも、街乗りや免許取得したての子供用には、ゲタ代わりの小型車を買い求める。

ウーノやY10は、年々サイズが大きくなる新型車と違ってコンパクトで、イタリア独特の古い家屋のガレージに収まることから、現在でも人気が高い。したがっていずれのモデルも、いまだ市場価格は1000ユーロ(11万5000円)前後をキープしている。筆者が聞いたジェノヴァの中古車業者も、そうした中古シティカーは「入庫した途端、右から左へと売れてゆく」として、常に品薄状態であると証言した。

中古車市場が人気ならば、盗難も増える。今回のトップテンには、そうしたイタリアならではの事情も映し出されているのである。ちなみに、イタリア語でクルマ泥棒は、topi d'auto(自動車のネズミ)という。ネズミは熟成チーズも好物なのだ。

大矢アキオの欧州通信『ヴェローチェ!』
筆者:大矢アキオ(Akio Lorenzo OYA)---コラムニスト。国立音楽大学卒。二玄社『SUPER CG』記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わずファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』のレポーターをはじめ、ラジオ・テレビでも活躍中。主な著書に『カンティーナを巡る冒険旅行』、『幸せのイタリア料理!』(以上光人社)、『Hotするイタリア』(二玄社)、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)がある。

《大矢アキオ Akio Lorenzo OYA》

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