【特集クルマと震災】中古車需要が急増、低価格車とHVに人気集中

自動車 ビジネス 国内マーケット
被災地では低価格で購入できる中古車のニーズが高まった。また燃料不足の影響から燃費の良いハイブリッド車の人気も上昇した。(写真はジャパンオート仙台)
被災地では低価格で購入できる中古車のニーズが高まった。また燃料不足の影響から燃費の良いハイブリッド車の人気も上昇した。(写真はジャパンオート仙台) 全 18 枚 拡大写真

震災直後、多くの移動手段が失われたなかで、車は人々の足となった。地震や津波で車を失った人々の多くが再び自家用車を手に入れるべく、カーディーラーや中古車販売店に足を運んだ。特に、短期の納車が可能な中古車には需要が集中した。

◆とにかく足が欲しい…震災を経て需要の変化も

自動車販売店に来店する人は一様に「とにかく早く足が欲しい」というニーズを抱えている。震災では多くの自動車ユーザーが自家用車を失い、移動の自由を奪われた。移動手段を得るという根本的な問題の早期解決のため中古車を求める人々が急増した。

中古車であれば、納車にかかる時間は長くて数日。大きな余震もあり、再び自家用車を失う可能性があると考えるユーザーは、高価な車両を損失した場合のリスクを考慮し、低価格な中古車の購入を図る。震災後ならではの需要の変化があった。

被災地で急増した中古車ニーズ。仙台市宮城野区にある中古車販売店では、20~30万円の低価格帯を軸に車両を販売する。4月の月販台数が当初目標の45台に対し、約3倍となる150台ほどに跳ね上がった。同店舗では平常時と変わらない4~5人の営業スタッフで、需要の急増に対応した。

人気のある車種は、軽自動車やミニバン。この傾向は震災前後で大きく変化していない。仕入れに関しては関東以北のオークションを中心に、不足することなく車両の確保を行えているという。

ただ、懸念材料も存在する。中古車オークションの相場が平常時に比べ1~2割上昇している。これは被災地の中古車需要の急増に伴う上昇と見られる。

◆中古HVは仕入れ直後に売れる…中・高価格帯の中古車販売店

仙台市宮城野区から若林区の国道沿いは、多くの中古車販売店がしのぎを削る激戦区。そのため販売各店は独自色を押し出す。宮城野区に店舗を設ける中古車販売店ジャパンオート仙台は、中・高価格帯の中古車を扱う。震災直後、実燃費の高さにより、改めてその存在感を示したハイブリッド車(HV)の中古車両も積極的に販売している。

同店舗には、津波の影響はなかったが、大きな揺れのため展示車両が1~1.5mほど移動してしまったという。震災から10日ほどで営業を再開して以降、5月7日現在まで、平常時の3割増のペースで販売が行われている。4月は月販約100台となった。

顧客は主に仙台市の北にある多賀城市や塩釜市など、津波によって大きな被害を受けた地域から訪れる。9割近くは代替えの顧客で、移動手段として車を求める。

震災からおよそ2か月が経ち、需要は当初に比べ落ち着きを見せている。ただ、いまだにオークション価格は高い水準にある。特に低価格帯の車両価格が高まっているという。増子智巳社長は「例えば(平常時)30万円の中古車なら50万円、(平常時)50万円なら70万円くらいに価格は上昇しているのではないか」とみている。

一方、同店舗で主に扱っている中・高価格帯の中古車に関しては「低価格中古車に比べると大きく価格が上昇していることはない」(同)という。ところがHVは、中・高価格帯に属するにもかかわらず価格は上昇傾向にあるそうだ。

「『プリウス』の中古車は仕入れてすぐに売れてしまう」と増子社長は話す。

震災に端を発したガソリン需要の高まりは、結果としてHVの燃費性能の高さを際立たせた。その影響もあり、震災後、HVに対する需要は拡大しているという。新車に比べて短期間のうちに納車される中古HVに人気が集まっている。増子社長によると「特にプリウスとフィットHVの中古車の人気が高い」という。

これら中古HVの人気車種は、オークション相場が高まっており、中古車販売店では「顧客への販売価格の設定に頭を悩ませている」(増子社長)。場合によってはオークションの段階で新車と同等の価格がつくほどだという。

プリウスの中古車に関しては、30系の人気は最も高く、20系でも平常時に比べ20万円ほどオークション価格が上がっているそうだ。

◆アルファードHVでお米を炊いた

宮城野区周辺など被災地では、現在もガソリン不足に対してガソリン携行缶を購入するなどの動きが見られる。車は移動手段としてだけでなく、テレビやラジオによる情報収集、寝泊まりが可能な居住空間としても活用されている。

また、増子社長はHVの有用性について、トヨタ『エスティマハイブリッド』などに装備されている「100Vコンセント」を挙げる。

「100Vコンセントがあれば、電化製品も使用できる。『アルファード』のHVについている100Vコンセントでお米を炊いたという話も聞いた。使用時のアイドリングは環境への負荷もあるかもしれないが、被災地で暮らす人々にとってはまずは生きること、生活することが第一。(今後のためにも)HVだけでなくガソリン車にもつけてほしい」と、災害対応というクルマの新たな役割についても指摘した。

《土屋篤司》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  3. 船上で水素を製造できる「エナジー・オブザーバー」が9年間の航海へ
  4. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  5. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る