【シムドライブ第1号】魚がヒント…発想の転換が生んだ空力フォルム

エコカー EV
EV試作第1号車のSIM-LEI(シム・レイ)
EV試作第1号車のSIM-LEI(シム・レイ) 全 6 枚 拡大写真
シムドライブの先行開発事業第1号EV『SIM-LEI』は、デザインもきわめて個性的だ。とくに後ろ姿は「特異」と言葉が似合うほど。キャビンをリヤに向けて大胆に絞り込んだことで、他の何にも似ていない強烈な個性が生まれた。

ただし、個性はあくまで結果。デザイン部ジェネラルマネージャーとして『SIM-LEI』のデザイン開発を統括した畑山一郎氏は、「目指したのは車両コンセプトの実証だ」と告げる。

4〜5人の大人が快適に座れてゴルフバッグも積める実用的なパッケージングを組み、なかつJC08モードでも100km/h定速走行でも300km以上の一充電航続距離を実現する、というのが車両コンセプトの骨子。それを実証するために、デザイナーたちが何より重視したのが空気抵抗の低減だった。

目標としたCd値は0.19。しかし初期のデザイン案を風洞実験したところ0.24にとどまった。ここで畑山氏は発想を転換したという。「従来の自動車のフォルムは、しばしば豹やチーターといった肉食動物に範をとってきた。しかしそれではCd値を劇的に下げることはできない。そこで我々は川魚や回遊魚に着目し、流れを身に纏うフォルムを作ろうと考えた」

魚にヒントを得て、リヤオーバーハングを延長しながらキャビン後部を絞り込んでいくことで、車体の後ろにできる渦流域を最小化。最終デザインは目標のCd=0.19を達成することができた。

全長が4787mmもあるのは、Cdを追求するためにリヤオーバーハングを延長したから。一方、空気抵抗はCdと前面投影面積の掛け算で決まるから、全幅は1600mmに抑えると共に、サイドインパクトビームをドアの外側に張り出させることで実質的なボディ幅をさらに狭くし、前面投影面積を削減している。狭くて長いプロポーションもSIM-LEIならではの特徴だが、これも300kmを超える航続距離を実証するための要素というわけだ。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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