【池原照雄の単眼複眼】サプライチェーンの問題点と対策

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トヨタ元町工場
トヨタ元町工場 全 4 枚 拡大写真

チェーンの“深部”を掌握していなかった

日本メーカーの国内外の自動車生産は、企業差はあるものの予想外のペースで回復してきた。各社が独自あるいは協力して進めた部品のサプライチェーン修復支援が奏功している。一方で今回の東日本大震災によって、内包されていた調達網の弱点も露わになり、自動車業界はその対策に乗り出し始めた。

自動車メーカー各社の首脳や調達担当幹部の指摘を総合すると、3月11日の大震災以来明らかになったサプライチェーンの主要な問題点は、ほぼ次の4項目に集約される。

(1)部品メーカーの調達先を遡ると、3次、4次といったメーカーの中に供給のボトルネックとなっているオンリーワン的企業の存在があった。(2)自動車メーカーは、そうしたチェーンの“深部”の実態を掌握しておらず対応に時間を要した。(3)深部では国内のみ、かつ1か所しか生産拠点のない部品メーカーが少なくない。(4)海外に進出している1次メーカーの2次以降の調達が日本に依存していた。

◆リスク分散は即ち拠点の分散化

自動車産業が成立して以来の広く深いダメージで、こうしたサプライチェーンの課題があぶり出された。以上の(2)を除く各項目の問題解消に共通するのは、海外進出も含む「生産拠点の分散化」である。国内で複数の拠点を構える、あるいは海外の部品メーカー工場に供給している場合は、当該メーカーも現地化を進めるということだ。

リスクの分散は即ち拠点の分散化である。だが、資金力から1社での複数化が困難な企業もある。そうしたケースでは業態の似た遠隔地の企業と、代替生産など非常時対応の協定を結ぶという手も考えられる。経産省は先月、「自動車戦略研究会」を立ち上げているが、サプライチェーンに関してはこうした施策も検討してもらいたい。

一方、海外進出には部品産業の空洞化という問題もある。だが、開発部門まで移転するわけではないし、生産技術や開発力を維持するために一定の国内生産能力の確保は必要だ。海外進出によって新規の顧客を獲得し、業容を拡大するというチャンスにも眼を向けるべきであろう。

◆オンリーワン企業に注意と敬意を

(2)のサプライチェーンの深部の掌握については、自動車メーカーが1次メーカーと協力して進めなければならないし、すでにそうした動きも始まっていると聞く。実態の掌握なくして、リスクの在りかは見えてこない。

日本自動車工業会の志賀俊之会長は、3次、4次に位置するオンリーワンメーカーの存在によって「日本のモノづくりパワーを再認識させられた」とし、「そうした力を次世代に伝え、日本の成長や復興の原動力にしなければならない」と強調する。

そのためには、各社の調達部門はこれまで1次、2次に隠れて見えなかったオンリーワン企業の存在を認識すべきだ。注意と敬意を払いながらである。1次メーカーの部品を買いたたけば、そのシワ寄せどこに行くのか―。これからの調達活動ではそうした繊細さがないと、サプライチェーンの再強化はおぼつかない。

《池原照雄》

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