放射能、被災車両のリサイクルにも影響

自動車 社会 行政
石巻市(5月上旬)
石巻市(5月上旬) 全 18 枚 拡大写真

放射能の問題は、被災車両についても深刻な影響をもたらしている。さまざまな素材と技術が凝縮された資源のかたまりともいえる自動車。被災車両がリサイクルできる資源となるか、放射性廃棄物となるかは、汚染の状態に大きく左右される。

宮城県多賀城市では5月上旬時点で「限りなく0.3マイクロシーベルトに近い」

被災車両がリサイクル可能か否かを分ける要因になるのが放射能濃度だ。

仙台市の北東に位置する多賀城市。被災車両の処理にあたる多賀城市の建設部道路公園課長・鈴木弘章氏は5月上旬時点で、「多賀城市の被災車両に対して放射能計測を行ったところ、0.3マイクロシーベルトに近い数値が計測されている。風向き次第では汚染が進む。被災車両がリサイクルできなければ、本当にただのゴミとなってしまう」と不安を話した。

鉄スクラップリサイクル時、放射能の国内業界基準値は0.5マイクロシーベルト。環境次第で、被災車両のリサイクルが不可能になる場合もある。

鉄スクラップの基準値は厳しく設定

鉄スクラップの放射能基準値0.5マイクロシーベルトはどのような値なのか。

人が直接摂取する野菜類の暫定基準値は、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告をもとに、原子力安全委員会が定める1キログラムあたり放射性ヨウ素2000ベクレルとされている。

放射能の強さを表すベクレルを、放射線量を表すシーベルトに換算する際は、放射性物質の種類によっても数値が変わる。例えば野菜1キログラムあたり2000ベクレルの放射性ヨードが計測された場合、この野菜1キログラムを経口摂取すると、約44マイクロシーベルトの放射線量となる。

鉄スクラップリサイクル時の基準値0.5マイクロシーベルトと比較すると、鉄スクラップの基準が厳しいレベルに設定されていることがわかる。

輸送の間に汚染進み基準値越え

鉄スクラップ事業を手がける三井物産メタルズによると、破砕業者がもっている放射能測定ゲートは、絶対値を計るものではないという。上限値に「達している・いない」を測定、医療機器など特殊用途での高濃度汚染物質が混じっていないかを判別することが主な目的となっている。

震災により、放射能濃度の平均値は微量ながら高まっている状態。スクラップ直後は基準に満たない濃度であっても、輸送の間に濃度が高まり、高炉や製鉄所に到着した段階で基準値をオーバー、資源としてリサイクルできなくなるケースもあるという。

放射能濃度は、雨や風といった自然環境に左右されるため、数値に関しては今後も引き続き注意を払うことが求められている。

《土屋篤司》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 狭い道! 制限1.9mだが何かがおかしい…東京都小金井市
  2. 「リアウィンドウがない」のが斬新と評価! ポールスター『4』がデザイン賞の最高賞に
  3. ポルシェ、新型『911カップ』発表…520馬力にパワーアップ
  4. コルベット史上最強の「ZR1X」、60年ぶりマット塗装の限定車は約3575万円から
  5. トヨタ『ハリアー』6年ぶりのフルモデルチェンジへ…注目ニュースベスト5 2025年上期
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る