被災車両はリサイクルできれば資源になる。リサイクルのためには一定の手続きが必要となるが、震災を経て所定の手続きが可能な状況にない車両も多い。そこで国は早期復興・復旧を目的に、手続きの簡略化を図った。
◆経産省、リサイクル料金の支払い手続きを簡素化
被災車両のリサイクルに関して主務官庁である経済産業省は、登録番号や車台番号が分からなくなった車両のリサイクル料の処理を担当する。
リサイクル料を管理する自動車リサイクル促進センターの「特定再資源化預託金等」が持ち主不明被災車両のリサイクル料に充てられる。
特定再資源化預託金等は、一度リサイクル料として集められたものの、さまざまな理由で実際のリサイクルには用いられなかった預託金。年間約16億円〜20億円が貯まっている。通常それらの一部は、離島対策や不法投棄対策へ用いられている。
自動車リサイクル料は、新車購入時、車検時、廃車時のいずれかのタイミングで、ユーザーが普通車1台につき1~2万円を負担する。リサイクルの実行責任を持つ自動車メーカーの代わりに自動車リサイクル促進センターが料金を管理している。自動車メーカーの経営状態に左右されず、リサイクル原資を安定供給するためだ。
◆リサイクル料金の預託率は100%に限りなく近い
リサイクル料金の預託率は国内保有車両の約99%にのぼる。損傷が激しく、登録番号や車台番号が確認できない被災車両は、リサイクル料金が支払われているか確認をとることは難しいが、高い確率でリサイクル料の支払いはすんでいる。
このため経産省は、自動車リサイクル促進センターの特定再資源化預託金等を被災車両のリサイクル料に充てることを決めた。「登録番号などがわからない被災車両は最後まで残ってしまう。早い復興のため、リサイクル料の確認簡素化は、処理作業を速やかに行うために必要な手段」(経産省製造産業局自動車課橋本氏)という。
リサイクル料金の支払いが把握できない車両台数について、自動車リサイクル促進センターの齋藤和紀理事は「全被災車両は多くみて約40万台。そのうちの3割の12~13万台が対象になるのではないか」と見通している。