【クラリオン NX501 インプレ】おでかけの楽しさを再認識させてくれるドライブ体験演出ナビ

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マップルナビ3を採用しているクラリオン『NX501』
マップルナビ3を採用しているクラリオン『NX501』 全 18 枚 拡大写真

紙地図や旅行ガイドブックで著名な昭文社の子会社で、地図とナビゲーションのアプリをハードメーカー向けに提供しているキャンバスマップルがついにAV一体機に初採用された。クラリオンの『NX501』がそれだ。

◆ナビアプリとAV機能で製品の狙いを明確化

マップルナビの印象を述べる前に、本機のアウトラインを紹介しておこう。NX501は北米などで販売しているハードウェアをベースに、ワンセグやUIなどの日本仕様化を行うと共に、キャンバスマップルのカーナビアプリ『マップルナビ3』を組み込んだもの。BluetoothやDVD再生など充実したオーディオ・ビジュアル機能を備え、6.2インチの高解像度なWVGA液晶を持つ。

マップルナビ3は、「まっぷるマガジン」約100冊分、約8万件の観光ガイド情報を収録し、ガイド情報は業界最多の12万枚。ぬけみち情報やおみやげ情報案内など、ドライブレジャーで有用かつ魅力的な便利機能を多数備えている。アプリケーションは本体前面にカバーで覆われているmicroSDHCカードに収められている。容量は約8GBだ。カー用品店での店頭価格はおよそ6万円台ということだが、この品質感で取付費込みでも8万円前後という価格はショッキングというほかない。

ほぼ同じ価格帯のベーシッククラスのAV一体機はDVD再生やBluetoothに対応しないものが多く、画面解像度もQVGAクラスとなるため、NX501はそれらに比べて一歩抜きんでている。ではなぜこのような魅力的な価格が実現できたのかというと、ひとつは世界の汎用ハードウェアをベースとしていること、もうひとつは車速センサーやジャイロなどGPSをサポートする諸装備を非搭載としたことが大きい。その点が、ナビ性能にどのような影響を与えているかも気になる所だ。

◆PNDより大きな画面が使いやすさを生む

まずメニューまわりから見てみよう。NX501では本体左に専用キーが設けられ、このキーでナビゲーションと、ワンセグ、ラジオ、Bluetoothオーディオ等のAVメニューとを行き来できる。AVメニューの操作はスマートフォンのようなフリック操作にも対応しており、動きも滑らかで、メニューアイコンにはアニメーションによる演出もあったりと、芸が細かい。日本のカーナビには珍しい操作感とUIは“世界仕様”であることを感じさせる。

注目のナビゲーションはどうか。ナビに切り替えると、慣れ親しんだ一般的なカーナビのUIとポップな色づかいにホッとする。AV一体機ということで色づかいは落ち着いた色調にチューニングを施したというメニュー回りは操作性も良好だ。というのも、これまでマップルナビは画面サイズの小さなPND向けに作られたものが多かった。PNDに採用されたものでも使いやすさに配慮されていたが、6.2インチのディスプレイになったことでボタン類の押し間違えや操作ミスがほぼなくなった。また、ガイド情報の写真も大画面で見られるから観光地の風情や印象もよく伝わってくる。さらに、WVGAの解像度になったことで、あたかも紙地図のような表現の地図画面になったことも評価できる。画面サイズが大きくなった事によるメリットをまず感じた。

◆コンテンツの質の高さを感じさせる

マップルナビ3の特徴であるガイドブック情報も試した。メインメニューには専用の「マップル」メニューが設けられ、ここから「観光地から探す」「今いる観光エリア」「ベストドライブ」「まっぷるコード」などを選択する。「観光地から探す」を選べば、広域エリアから詳細に掘っていくことができる。エリアごとのアイコンもガイドブックを意識した専用デザインとなっており、旅行の予定を立てるワクワク感を演出してくれる。スポットだけでなくエリア全体の紹介情報も用意されているから、目的地を探すためでなく何とはなしに見たくなる工夫が凝らされているのも面白い。

見たいエリアを選択すれば、「定番スポット」「ご当地グルメ」「お土産」の3カテゴリから見ることができ、全カテゴリから施設一覧を表示することもできる。それぞれ魅力的な写真とともに紹介されており、このあたりガイドブックコンテンツの質の高さを実感する部分だ。

マップルナビ3の新しい機能である、「スライドショー」と「お土産ガイド」についても触れておこう。スライドショーは時速7km/h未満での走行・停止状態が1分以上経過したら自動的に近くのお勧めスポットをナビ画面上に表示させる機能。長時間の信号待ちや渋滞時にパッと切り替わるので、ついつい目が行く。なかなか気が利いた機能だ。またお土産ガイドは、外出先から「自宅へ戻る」ボタンを押した際に、そのエリアのお土産情報を表示するというもの。お土産から店舗へのルート探索も簡単だ。

これらの機能は、余りに長い渋滞や信号待ちで待たされている時に、繰り返し表示されることもあり、また、お勧めスポットの件数が少ないと同じ場所が何度も出てくるということもある。渋滞の気晴らしということを考えれば、多少遠くても蘊蓄的に各地の名物を紹介するというものでもいいと思う。めったに行かない場所でも「こういう場所があったのか」という新しい発見が生まれるかも知れないからだ。もちろん、こうしたレコメンド機能は煩わしいと感じたら、設定でオフにすることもできる。

もちろん、こうしたマップルメニュー以外にもフリーワード検索、住所、電話番号、周辺などのメニューも用意されている。ナビの初心者だけでなく、経験者でも使用に迷うことはほとんどないだろう。

◆割り切りに納得できるか

さてルートガイドだが、一般的な使用では十分な精度とルート品質を備えているものの、東京都心の高架下やトンネルの続く首都高などではさすがに厳しい。GPSにとってシビアなコンディションでの走行が多いドライバーは少々不安かも知れない。

ただ個人的にはPNDやスマートフォンでの精度でも十分満足しているので、価格を考えれば割りきれる範囲だ。むしろ、他社との差別化を考えれば車速センサーやジャイロを省いてでもオーディオ機能とナビアプリの充実に当てた商品企画は、低価格AV一体機の選択の幅が拡がるという点で歓迎すべきことと言える。センサー類の接続が不要なのでDIYでの装着も比較的容易だろう。

なおマップルナビ3ではレーン/ジャンクションガイド、都市高速入口表示、一方通行表示、ぬけみち表示などに加えて細街路探索の案内にも対応しており、目的地に到着するまでしっかり案内してくれることも、細かい点だが嬉しい機能だ。都市図は335エリア分を収録している。

総じてマップルナビ3の機能は満足できるが、要望点があるとすれば、やはりVICSへの対応だろうか。マップルナビ3ではVICSに対応していないため、ぬけみち情報が用意されているが、ぬけみちを選択した後のリスク(かえって混んでいた/やたらと細い道に案内された)をついつい考えてしまう。VICSによって混雑具合が可視化されていれば、このまま同じ道でいくのか、それとも迂回するかという判断もできる。また、PNDでもFM-VICSの対応例は増えており、ローエンドのAV一体機の多くはほぼ標準装備なのでぜひ対応を望みたい。

◆「ドライブ体験演出型ナビ」がナビトレンドの潮流に

まとめよう。AV一体機の最安価格帯でありながら充実したAV機能とWVGA液晶の表現力、そしてその高解像度を活かしたマップルナビ3のリッチなUIとドライブ旅を楽しく演出する諸機能を組み合わせたNX501は、これまでのAV一体機が踏襲してきたコンセプトの延長線上にはない存在だ。ハッキリ言えば「正確に・速くナビゲートして欲しい」というユーザーには向かないだろう。本機は、ガイド情報だけでなくオーディオ機能の充実振りも含めて、ドライブの体験をいかに楽しく演出するかという発想に基づいた商品企画になっているからだ。

先頃登場したサイバーナビも、単に道案内するだけではなく、ARによってドライブをエンターテインメントにするというのがコンセプトのひとつだったが、手法もメーカーも価格も異なれど目指す方向性は一致している。最近では省燃費ルートやエコドライブのサポート機能を充実させているものが増えてきているが、そうしたエコアシスト的な機能と並んで、「ドライブ体験演出型ナビ」がひとつのトレンドとなって行くのではなかろうか。NX501は普及価格帯でその方向を志向した意欲的なモデルと言える。

《北島友和》

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