G-BOOK全力案内ナビ「au向け月額化で更なる利用者拡大目指す」…トヨタ×野村総研 キーマンインタビュー

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トヨタ自動車 e-TOYOTA部 テレマティクス事業室の松岡秀治氏
トヨタ自動車 e-TOYOTA部 テレマティクス事業室の松岡秀治氏 全 12 枚 拡大写真

トヨタ自動車が提供するテレマティクスサービス「G-BOOK」。そのスマートフォン向けアプリ「スマートG-BOOK」、同アプリと連携する野村総研のナビアプリ「G-BOOK全力案内ナビ」のリリースから半年あまりが経過した。

そして今回、G-BOOK全力案内ナビでは利用者の更なる拡大を狙うべく、8月1日よりauのスマートフォン向けにau oneマーケットでの月額課金アプリ(「プレミアム・G-BOOK全力案内ナビ 月額コース」)の提供も開始する。コラボレーションの経緯と今回リリースした月額化の狙いについて、コラボレーションの先頭に立ったトヨタ自動車 e-TOYOTA部 テレマティクス事業室の松岡秀治氏と、野村総合研究所 ユビークリンク事業部の増田有孝氏に話を聞いた。

◆「スマートフォン向けのG-BOOKアプリ提供は当然だった」

----:トヨタがテレマティクスサービスとして「G-BOOK」を2002年にスタートし、以来「G-BOOK α」「G-BOOK mX」と世代交代を経て進化してきました。そして2010年12月に携帯端末向けのアプリ「スマートG-BOOK」をリリースしました。トヨタとしてアプリを提供するという理由は。

松岡:G-BOOK mXの次に取り組む課題として、基本的には携帯電話のサービスを充実させようと考え、1年半ほど前から検討を進めてきました。しかし、我々が思っていた以上にスマートフォンの普及が早く、スマートフォンはカーナビユーザーにとっても重要なアイテムになるということから、アプリを作ることに決まりました。

----:スマートG-BOOKだけでなく、それと連動するカーナビアプリ「G-BOOK 全力案内ナビ」も同時にリリースされました。

増田:当時は、自分たちだけで全力案内!を磨いていただけでは限界はあるなということを感じつつあったころでした。トヨタさんからオペレーターサービスとの組み合わせという挑戦的な話をいただいて面白いな、と。プローブ交通情報も世の中にないものを作り出そうとやってきましたし、G-BOOKとの連携についても利用者の支持を得られるはずと考え、取り組みがスタートしました。

◆「スマホナビでナンバーワンを取る」

----:トヨタは他ブランドとのコラボレーションという事例は多くないと思うのですが。

松岡:スマートフォンへ取り組むに当たり、独自領域と汎用領域を切り分けて考えようという基本線がまずありました。1年前、スマートフォン向けのナビアプリはまだ出たばかりで、技術的にもサービス的にも競争が激しい状態でした。この領域をゼロから自前で取り組むよりも、厳しい環境の中で戦われている実績のある企業とパートナーシップを結んでいった方がより早くより良いものができるという結論になったのです。

----:パートナーの選定にあたって、いくつかスマートフォンのナビアプリを試されたと思いますが、全力案内!を選ばれた理由は。

松岡:早く・リーズナブルな形で、スマホ向けのテレマを実現する、という意図がまずありました。独自の資産で取り組んでいたG-BOOKのオペレーターサービスとナビを上手く組み合わせることで、ユニークで魅力的なサービスが提供できるのではないか、と。そこで全力案内!は、iPhoneだけでなくAndroidにも提供していたということ、また必要十分以上の機能を持っていながら価格面でも魅力的で、なおかつこちらの要望に対して、柔軟にかつスピーディーな対応をしていただけたということです。

----:増田さんとしても、ぜひこのコラボレーションを実現しようという意気込みだったのですね。

増田:2010年の夏というのは、Androidプラットフォームのビジネスが大いに期待されつつあった頃でした。当社でもiPhoneに引き続いて、全力案内!のAndroid版を2010年7月にリリースしました。すでに提供していたWindows Mobile(Windows Phone)向けも含めて、その時点でAndroid・iPhoneを含めた3プラットフォームに対応していたのは全力案内!だけでした。スマホナビでナンバーワンを取るぞ、という意気込みで取り組んでいたころでしたから、トヨタさんからのお話しはぜひ実現したいと思いましたね。

◆「G-BOOK登録ユーザーが価値を感じる価格設定を」

----:7月に話が来て、12月のリリースという期限については、どのような認識をお持ちでしたか。

増田:そうとうタイトなスケジュールと思ったのは確かです。2つのアプリ間で決めごとがたくさんあり、仕様を決める部分でかなり苦労しました。ただ私どもとしては、G-BOOK全力案内ナビを有料のアプリとして提供させていただくのですから、それだけ価値のあるサービスを作り上げたいと考えていました。

----:G-BOOK全力案内ナビはプローブ付きで半年900円という設定で、一方単体の全力案内!ナビはプローブなしで1年900円、その他プローブやVICSなどのオプションも用意されていますね。この価格設定の狙いは。

松岡:我々としてはオペレーターサービスを全力案内に組み合わせたかった。そして、G-BOOKに登録している方にバリューを感じていただける価格設定も狙いとしてありました。

増田:当社としては、既存の全力案内!ナビのご利用者も納得していただけるように、利用期間やサービスの組み合わせ方を工夫しました。G-BOOK全力案内ではVICSなどのプレミアムオプションを700円で用意していますので、利用期間に半年と1年という違いはありますがG-BOOK全力案内ナビも通常の全力案内!ナビも機能的には同等の仕様にすることができます。

----:今回、トヨタのスマートフォンの取り組みの速さに皆が驚きました。PNDがカーナビマーケットでかなりのシェアを得ている中で、PNDというスタイルの提供は見送った理由は。

松岡:まずPNDはカーナビを置き換えるもの、スマートフォンはカーナビと連携するものという認識の違いがあります。さらにPNDはハードウェアからの仕様の策定や開発が前提になり、さらにソフト面でもG-BOOKとの連携で開発がかかってしまいます。汎用的なスマートフォンであれば参入障壁が低く、取り組みやすかったという事情もあります。

◆au端末向けに月額263円での提供がスタート、60日間無料利用も

----:スマートG-BOOKとG-BOOK全力案内ナビのリリースから半年ほど経ちましたが、ユーザーの反応は。

増田:新しいユーザーが着実に増えているというのは実感としてあります。特にオペレーターサービスは1度使ってみると、便利さに気づかれて繰り返し利用される方が多いようです。何度も使っているからこそだと思いますが、改善要望もかなり寄せられてきています。

松岡:スマートG-BOOKのダウンロードも順調に伸びています。そこから全力案内ナビを買われている方もいらっしゃいます。

----:Android、iPhone両面での展開となっていますが、Androidに対する期待と開発・検証の苦労もしばしばアプリベンダーから耳にします。野村総研としては、課金のスタイルで今後どのような見通しをお持ちですか。

増田:今回、au oneマーケットで月額課金の「プレミアム・G-BOOK全力案内ナビ 月額コース」をリリースします。月額課金という形で利用者の方が使いやすいサービス機会を提供するためにスタートしました。まずはauのスマートフォンからということになりますが、月額課金のau oneマーケットか半年分買い切りのAndroidマーケットかを分岐選択できる仕様になっています。価格は月額263円となっています。

----:プレミアム・G-BOOK全力案内ナビ 月額コースはスマートG--BOOKのみで、全力案内!ナビ単体はないのでしょうか。

増田:月額コースはG-BOOK全力案内ナビのみとなります。プローブ、G-BOOKオペレーターサービス、VICSもフルサービスで提供するものです。さらに、10月末まで初回登録に限り60日間無料で利用可能のキャンペーンもおこないます。これがG-BOOK全力案内ナビならびにスマートG-BOOKの利用者をさらに広げる起爆剤になれば、と期待しています。

◆「据付ナビとスマートフォンは棲み分けていく」

----:ユビークリンクというベンチャーから、この7月に再び野村総研グループの一部書として再編されたわけですが。

増田:野村総研100%出資の子会社としてユビークリンクを立ち上げてから4年弱が経ちました。最終消費者にサービスを提供するという業務でしたので別法人として独立してやってきたのですが、企業様とパートナーシップを結んで消費者に向かうサービスとなることから、ふたたび野村総研に戻ってきました。人材もお金もノウハウも投入しながらこの事業をさらに大きくしていければ、と考えています。組織統合後としては初のメジャーリリースですから。企業連携の一番良い形をアピールできればと思います。

----:スマートフォンの高機能化やディスプレイオーディオやターミナルモードなど、車載モニターにスマートフォンのUIを表示させ操作させる技術も出てきてトヨタをはじめ各社が開発に取り組んでいます。近い将来に車載専用ナビというものはなくなるのでは、という意見もありますが。

松岡:スマートフォンが非常によく使われるキーデバイスとなっている以上、メーカーとしてはこれを少しでもクルマのなかで使いやすくする責任があると考えています。機能としては据付型のナビ方がまだ優れている。そういう意味でもユーザーが被る可能性はまだ少ないと思います。

増田:私どもとしても、自社位置精度やレスポンス面でスマートフォンナビに対する車載ナビの優位性は今後も引き続きあると考えています。ですが、スマートフォンならではの良さもあり、通信を活かした機能やソーシャルメディアとの連携からナビへとつなげるなど、様々な可能性を秘めています。

◆スマートフォンはG-BOOKへのゲートウェイ

----:トヨタは10年以上テレマに取り組んできて、DCM(通信モジュールユニット)を中心とした取り組みをされてきました。通信契約や月額の通信料をどのように扱うか等の議論はあったと思いますが、スマートフォンの通信を利用するというのはそうした問題から開放されるひとつの解決策になると考えていますが、DCMとスマートフォンの通信機能や提供サービスは今後どのような切り分けをしていくお考えですか。

松岡:DCMは高級車を中心に需要があり、今後もフルサービスを提供します。しかし全てのクルマにDCMをつけらませんので、スマートフォンを活用します。多くの方々にG-BOOKを利用してもらう為のゲートウェイとしてスマートフォンを位置づけています。

----:2012年にトヨタが発売を予定しているPHVについても、テレマサービスを提供されるということでしょうか。

松岡:DCMとなるかスマートフォンとなるか、詳細は申し上げられませんが、おっしゃる通りPHV/EVに必要なテレマサービスの準備は進めています。

《聞き手 三浦和也》

《まとめ・構成 北島友和》

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