発売前から大々的に“第三のエコカー”キャンペーンを展開して話題と注目を集めているダイハツ『ミライース』。ハイブリッド車でも電気自動車でもない新しいエコカーということだが、ガソリン車の逆襲といった感じである。
特徴は何といっても低燃費で、JC08モードで30km/リットルを達成した。少し前に発売された『デミオ』も30km/リットルを達成していたが、これは測定条件がやや緩い10・15モードでの燃費。デミオはJC08モードでは25.0km/リットルにまで下がる。逆 にミライースを10・15モードで測定すると32.0km/リットルになる。文字通りガソリン車で最高の低燃費を実現した。
この低燃費は特徴的なひとつの技術によって達成したものではなく、いろいろな技術の合わせ技によって達成された。燃焼の改善や制御を中心にしたエンジンの改良、ECOアイドル(アイドリングストップ機構)の採用、CVTの改良、エネルギーマネジメントの改善、空力特性に配慮したデザイン、徹底した軽量化など、さまざまな技術を積み重ねることで低燃費を実現した。それが凄い。
30.0km/リットルの低燃費は動力性能を犠牲にして獲得した低燃費ではなく、パワー&トルクの数値は基本的に従来からのエンジンと同等だ。CVTの変速制御も燃費を強く意識したものではあるものの、燃費ばかりを志向して走りを鈍くしたものではないし、タイヤも転がり抵抗の少ないエコタイヤを使いながらもしっかり走れてそこそこの乗り心地を確保している。ミライースは相当に真っ当に低燃費車を作ったといえる。これが今の時代の低燃費車なのだ。
最も安い79.5万円のDにもECOアイドルを採用して30.0km/リットルとしたのも注目点。ともすれば、低価格は価格重視のグレードに任せ、低燃費は燃費専門のグレードに任せるなんてことになりかねないところだが、そんな言い訳なしに低価格と低燃費を同時に達成しているのも凄い点だと思う。
強いて物足りない点を上げるなら、運転して楽しいクルマだったり、あるいはずっと乗ってどこまで走り続けたいと思わせるようなクルマではないことが不満点である。平板でつまらないデザインは、いささかも所有欲をそそるものではない。でもミライースは低燃費と低価格、優れた実用性を備えたクルマなのだから、そんな物足りなさの指摘は言いがかりというべきかも知れない。
明らかに問題なのは、後ろの席にヘッドレストレイントが装備されていないこと。ダイハツ関係者に指摘すると、「ヘッドレストレイントを装備しなかったのは判断ミスだった、早期に対応したい」との話だった。私の指摘以前にも多くのユーザーから指摘されているとのことだった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。