5 | エネルギー政策の舵を切り直す |
宮崎---残っているのは大物だけになってきました。昨年は「大フィーバー」と見出しを付けたEVですが…。
石田---東京モーターショーはEV一色でしたけどね。
高木---『リーフ』や『i-MiEV』が出てきて「現実のモノ」となったけど、昨年の今頃と比べたら小休止しちゃった感が強い。
宮崎---ゼロスポーツの倒産とか、リーフCOTYとか、レスポンス的なネタもたくさんあったんですけどね。
石田---原発事故の前と後では事情もだいぶ違ってきました。火力発電だと深夜電力もゼロ・エミッションではない。
宮崎---スマート・グリッドは逆に原発事故の後、動きが活発になりました。系統電力が失われる状況が生じたことで、電気の有効利用を真剣に考え出したというか。
三浦---スマート・グリッドなんて机上の話であって、まだどこもやっていないよ。
一同---えー。
三浦---我々は展示会に行っているから「そういうものがある」と思っているけど、実際まだないでしょう。EVが売られて、現実のモノとなったのに、今はまたスマート・グリッド、防災活用といったイメージの中の話に戻ってしまった感がある。
高木---そういった意味でも昨年のフィーバーがウソのような状態。
三浦---この夏の節電と、電気を大量に消費するEVは噛み合わなかったし、補助金が出ないこともあり、セールス的にも伸びがなかった。
高木---現実のモノとなったら、現実の厳しさに直面したという感じがあります。
高木---EVはそのぐらいですかね。残るは超大物がふたつ。震災と原発。
三浦---震災ネタは広げるとキリがないので、「震災とモビリティ」というテーマでいきましょうか。震災でいろいろなものが打撃を受けましたが、移動手段に焦点を当てて検討しましょう。
高木---高速道路は寸断され、鉄道も甚大な被害を受けました。
中島---震災当日のJRはひどかった。駅から大量の人を追い出したことで帰宅難民も発生しましたね。
石田---東京なんて被害がほとんど出ていないのに、震災と計画停電で数日間に渡って電車はダメージを抱えたままでしたからね。
高木---鉄道の脆弱性が明らかになる一方、道路関係の復旧は非常に頑張ったと思います。高速道路も驚異的なスピードで路面を直して、速度制限はあるものの、すぐに使えるようになりました。
宮崎---ホンダやトヨタなど、テレマティクス情報を提供している会社でタッグを組んで、通行可能な道路の情報を提供するというのもよかったですね。
高木---震災でわかったのは、「人や生活はモビリティに支えられている」ということですね。いろいろな分野にモビリティが関わっていることが見えてきたし、これが寸断されると人の流れも物流も止まってしまう。
石田---コンビニやスーパーの棚から何もかもが無くなりました。
三浦---商品が無かったわけではないんだよね。実際には「届かなかった」という側面が強い。
中島---民主党は「コンクリートから人へ」という政策でしたが、国交省レベルでも高速道路に対する見方は震災後に変わった気がしています。これまでは「通行しない高速道路はいらない」でしたが、「高速道路と、サブルートとしての一般道は共存すべきだ」に変わりました。どちらかがあれば物流は確保できると。
宮崎---ガソリンが無かったというのも…。
三浦---被災地は道路が寸断されてしまったけれど、被災地ほどの被害はなかった東京などの都市部では需給のバランス問題が発生した。買わなくていい人まで買い占めに走ったことでモノが無くなった。
高木---過剰在庫を持たないジャスト・イン・タイムの脆弱性も明らかになったわけですね。
三浦---これもサプライチェーン問題なんだよね、実は。
宮崎---残るは原発です。
三浦---中島さんの活躍で、爆発直後からいろいろなニュースを提供してきましたが、レスポンス的な視点で見ると「安全神話や技術神話の崩壊」というところですかね。
中島---そうですね、福島第一の事故をキッカケとして、様々な問題というか、これまで見なかった、見ようとしなかったものが次々と明らかになって、その波及効果の方が今となっては大きいというか。
高木---九州電力などのやらせメールなんていうのもありましたね。
中島---福島第一は津波の影響で崩壊の序章が始まって、爆発に至りましたけど、他の原発が止まったのは震災の影響ではありませんからね。
三浦---日本のエネルギービジョンも崩壊したし、地域経済や地域社会も崩壊した。これはまだまだ今後も継続する問題です。
(つづく)