東京オートサロン12、トヨタ自動車ブースの中央には往年の名車『2000GT』が置かれている。が、これはただの2000GTではない。エンジン、変速機、ガソリンタンクなどを丸ごと電気モーター、パワー制御装置、バッテリーに換装して電気自動車化した『2000GT SOLAR EV』なのだ。
「入手したレストアベース車の内張りを剥がしてみたら、至るところが錆でボロボロになっていました。そこで私たちは、単にコンバージョンEVを作るのではなく、関東自動車の持つクラフトマンシップを駆使して、究極のレストアを兼ねたクルマ作りをやろうと考えました」
関東自動車工業の試作課工長、菊池敬厚氏は思いを語る。関東自動車は量産車だけでなく、『センチュリー』や『センチュリーロイヤル』(皇室の御料車)など、クラフトマンシップが要求されるクルマ作りを手がけてきた歴史がある。今年の夏にはセントラル自動車、トヨタ自動車東北と合併して新会社となり、関東自動車の名は消滅する。「有終の美を飾る」(菊池氏)という意気込みで作られたクルマなのだ。
ボディの錆をすべて除去し、使えなくなった鋼板の部分は切り取って新規のパネルに置き換え、パテなどが盛られた部分も一切なくして新品のようになったホワイトボディに新車と同様の焼付塗装を施したという。
「ボディへの光の映り込みの滑らかさを見ていただくのが、2000GTソーラーEVのボディの仕上げぶりを一番実感できると思います。実際、他社がレストアした2000GTと並べてみたときに映り込んだ蛍光灯を見たのですが、関東自動車の2000GTに映った像は寸分のうねりもなく、完璧なもの。最高のレストアボディだと自負しています」
インテリアも、メーターの配置やダッシュボード形状などはオリジナルを生かしながら、表面にアルカンターラを貼るなど高級化。メーター自体はEVレースに必要な電圧計、電流計といったものに換装。インストゥルメンタルパネルにはセンチュリーのような蒔絵入り漆仕上げのフィニッシャーを貼った。まさに工芸品と言うべきクルマなのである。
モーター出力は120kW(163馬力)、バッテリーはパナソニック製の18650規格(ノートパソコンなどに使われている量産セル)のものを35kWhぶん搭載。ボンネットにはシリコン型太陽電池が、リアガラスには可視光透過率25%の半透明太陽電池が実装される。最高速度は200km/hであるという。EVだがモーターは直結型ではなく、6速MTを介してトルク増幅を行うとのこと。ローギアでの加速感はちょっと想像不能である。
往年の名車をレストアしたクラフトマンシップ、斬新なEVコンセプトと、いろいろな意味で注目のクルマだ。